首都決戦

 Side 木里 翔太郎


 まさか夜の首都で戦う事になるとはな――


『周辺の被害に気をつけろよ!!』


「わかってる!!」

 

 サエにそう言って次々と敵を撃破していく。

 とにかく数が多い。

 それに戦う場所が場所なので大火力の火器が必然的に封じ込められている。

 

 それでも戦うしかない。


『て、他の自衛隊の部隊も戦っているのか!?』


 よく見ると他の自衛隊の部隊も戦っている。



 Side 自衛隊の隊員たち


『本当にいいんですかね!? それに此方の装備は相手よりも旧式ですし――』


『今戦わずして何時戦うんだ!? また少年少女達に任せてノンビリするつもりか!?』


『あの無念さを知る者は皆立ち上がってくれ!! 少年少女達に戦争を押し付けた事に責任を感じているなら!! 皆、立ち上がってくれ!!』



 Side 総理大臣


「ほら見てみろ。どんなに御託を並べようが、どんなに綺麗事を並べようが、最後は絶対的な力を持つ者が勝つんだよ」


 と、イチゼンが市街地での戦闘の様子を自慢げに見せてくる。

 私はイチゼンの言葉よりもこの光景に胸を痛めた。

 なんてことだ。

 首都を戦場に変え、あの少年少女達だけでなく国民までもを巻き添えにした。


「私を殺せ――」


「ああ、親父に生かされてるのが分かんないのか?」


 それを聞いて私は笑った。


「何がおかしい!?」


「何がこの国の支配者だ! 父親がいなければ、家の権力がなければなにも取柄のない若造ではないか!」


「父親や家の権力を使って何が悪い!!」


 そう言って蹴り飛ばし続けてくる。

 そして一しきり蹴り終えるとハァハァと息を荒くし、汗を流して狂気を宿した瞳で 此方を見る。


「何度でも……言ってやろう……お前は総理の器ではない。ただのファザコンのクソガキだ」


「テメェ――」

 

『大変です!!』


 そこでモニターが切り替わり通信が入った。

 どうやら慌てている様子だ。



 Side 荒木 将一


「戦争反対!!」


「もう戦争なんてごめんだ!!」


「俺達は戦争のために戦争してるんじゃない!!」


 何時の間にか市民達が立ち上がっていた。

 この日本でだ。

 どうした事だろうかと思ってしまう。


『流石の日本人も戦争を経験して平和への意識が目覚めた――と言う事でしょうか』

 

 と、加々美 瞬が言う。

 

『そんなもんか?』


『それだけではありません。僕達や私達が戦い続け、そして谷村さんの演説――そして冷却期間を大して置かずにの今回の騒動――様々な要因が絡まって人々は立ち上がったのでしょう』


『理由の詮索は後だ。まだ戦いを続けている連中がいる』


『そうですね。そいつらを倒すのが僕達の役割です』


 そして俺と瞬はそいつらを倒すべく行動を開始した。



 Side 天王寺 イチゼン


 信じられない。


 日本人は腑抜けな愚民の筈だ。


 お行儀のよいデモしかできず、ネットで愚痴を零す事しかできないような連中ばかりの筈だった。


「まだ分からんのか? 国民も学んだのだよ」


「学んだ……」


 総理大臣が言う。


「平和は待っているだけでは訪れん、行動しなけれれば、戦わなければ訪れないとな」


「説教しやがって!! 逆らう奴は皆殺しだ!! どいつもこいつもぶっ殺してやる!!」 



 Side木里 翔太郎


『天王寺 イチゼンの機体を確認!!』


 雪代 マイナさんから通信が入る。


『親玉の一人が来たか――』


「ええ、アイツを倒せば終わりね――」


 俺とサエはイチゼンの下に急いだ。


 

 Side 天王寺 イチゼン


『早まるな戻ってこい!!』


『ウルセぇ!! どいつもこいつも俺をバカにしやがって!! 逆らう奴は全員殺してやる!!』


『落ち着け息子よ!!』


『だって、親父だってそうして来ただろう!? 逆らう奴、ムカつく奴は全員ぶっ殺してさ!! これまでだって、これからだってそうしてやるって決めてるんだ!!』


 そう言って特注の青いアインブラッドタイプを動かす。

 ブラッド粒子炉複数搭載型でやや大型化したが機体性能では負けてない筈だ。



 Side 木里 翔太郎


『あいつ、市街地でビーム兵器を乱射してやがる!!』


「敵味方どころか市民の巻き添えすらお構いなしなんて、とんだ駄々っ子ね!!」


 こんな奴が総理大臣なんてそれこそ破滅だ。

 一応上からは捕縛命令が出ているが――まあ出来たらでいいだろう。


『うるさいうるさい!! 俺は偉いんだ!! この世の誰よりも偉いんだ!! 誰よりもだ!! それを認めない奴は死ねばいい!! どいつこいつも死んでしまえ!!』 


『何があったか知らないが完全にキレてやがるぞアレは!?』


「動きが出鱈目で読み難い!! キレた方が厄介なタイプだったとはちょっと誤算だったわ」


 だが放置しておくワケにもいかない。

 

『俺達も来たぜ、厄介な状況になってるな!!』


 と、荒木さん達も来た。

 加々美さん達も一緒だ。


『連係プレイで一気に崩すぞ!!』

 

 と、俺は呼びかける。

 周囲を飛び回って機動性で翻弄し、そしてその隙を付いて攻撃する。

 幾ら火力が高かろうと、幾ら性能が優れていようと、所詮は一機だ。

 手持ちの火器や内臓火器を破壊される。


『ば、馬鹿な!! こんなアッサリ!? 俺は、俺はこの世の支配者になる男だぞ!? 俺は天王寺 イチゼンなんだぞ!! この世で誰よりも偉いんだぞ!? それがこんなところで死ぬのか!?』


『あの機体、ブラッド粒子炉が暴走して――』


「脱出する気配はないみたいね――」


『いやだ!! 俺は死にたくない!! 誰か助けてくれよ!! 何でもするから!! だから、だから!! 俺は!! 俺はまだ死にたくないんだぁああああああああああああああああ!!』


 そう言って天王寺 イチゼンの機体は爆発した。


『惨めな末路だったな』


 俺はポツリと漏らした。


「アイツはそれだけの事をしたのよ。これでもまだ手温い程のね――」


 サエがそう言う。

 色々と思う事があるが――


『……まだ肝心な奴が残ってる。』


 そう、天王寺 ゴウトクが残っている。


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