天王寺家の目的

 Side 天王寺 ゴウトク


 ワシはモニターで眺める。

 愚かな反逆者どもが次々と業火に焼かれる様を。


『敵部隊の波状攻撃が続いていますが戦況は此方に有利』


「気を抜くな。まだ奴達が来ていない」


『はっ!!』


 そう、あの小童どもを倒さない限り安心は出来ぬ。

 

『空中戦艦二隻が戦域内に確認!! レギンレイヴとシグルドリーヴァです!!』


「来おったか!! 待ちかねたぞ!!」


 奴達がきおった。

 同時にワシはある準備をする。



 Side 自衛隊 隊員


『隊長、我々が不利です』


『まさかここまで戦力に差があるとは――』


 天王寺 ゴウトクの私兵部隊の戦闘能力は我々の想像を遥かに超えていた。

 味方も大勢やられてしまい、残っているのは僅かだ。

 このままでは悪戯に戦力を消耗してしまうばかり。


『このままでは――』


『隊長!! 増援です!! レギンレイヴとシグルドリーヴァの2隻!! あのエース部隊です!!』


『なんだと!?』


 だがエース部隊だと言っても、ほぼ学生や一般人だけの部隊だと聞いている。

 なのでエース部隊だと言うのは作り話、デマだと言う認識も少なくない。

 


 天王寺家 私兵部隊 隊員


 あの二隻が来たが。

 だが所詮は機体性能がいいだけの素人の集まりだ。

 我々の敵では――


『無人パワーローダー一機撃墜!!』


『戦闘ヘリが――』


『戦闘機もやられました!!』


 最初はラッキーパンチを食らったかと思った。

 だが――


『戦車部隊が次々と破壊されていきます!!』


『此方側のパワーローダー部隊撃破されていきます!!』


『黒鬼部隊は何をやっている!?』


『うわぁ!!』


 次々と劇的に被害報告が増えて行く。


 このままでは不味い――



 Side 木里 翔太郎


『気づいたかサエ?』


 アインブラッド・レイヴンを身に纏い、俺は次々と敵を撃墜していく中でふと違和感を感じた。


「ええ。抵抗が想像以上に脆すぎる――」


 ネイキッドパワーローダー・桜花(複合兵装ユニット)を身に纏ったサエも同じ違和感を感じたようだ。


 避暑地を含めた数々の激戦を潜り抜けたからこそ分かる感覚だ。

 敵の抵抗が思ったよりも少ない。

 その事に何か不安を感じる。

 

 そもそもにして天王寺家は味方もろ共、攻撃で吹き飛ばすぐらいは平然とやるような連中だ。


 ……待てよ。


『まさか――罠――』


「じゃあ本当の目的は――」



 Side 総理大臣


「まさか天王寺 ゴウトクの狙いは首都の制圧だったとは――」


 現在東京都。

 特に国会議事堂周辺に天王寺 ゴウトクの部隊が展開している。

 装備の質が良くなったとは言え、弱体化した自衛隊では相手にはならないだろう。


「これで俺もこの国の支配者か」


「天王寺 イチゼン」


 そう言うとぶん殴られた。


「様を付けろよ。これから俺がこの国のリーダーになるんだからな」


「そう言う事だ」


 と、天王寺 ゴウトクが息子の蛮行を止めずにただ冷淡にそう告げた。

 

「まあ、総理大臣なんて学校の学級委員みたいな楽な仕事だろ? 楽勝だよ」


「総理の椅子はそんな安い物ではない。座った物は皆後悔するのだ」


「は、説教かよ」


 イチゼンは聞く耳持たぬ様子だった。


「さてと、お前にはやってもらう事がある」


 ゴウトクは言った。


「やってもらう事だと?」


「お前にも利用価値はあると言う事だ」


 利用価値?

 今更何をどうしようと言うのだ。


☆ 

 

 天王寺 ゴウトクの言う利用価値は簡単だった。

 自分達が国の元首である事を認める事。

 そして全国の自衛隊達に銘じてあの少年少女達を――国を救った英雄達を始末させる事だ。


 ふざけるなと思う。

 

 彼達はこの国に十分すぎる程に働いてくれた。


 にも関わらずまた裏切れと言う。


 だから私はこう言った。


「国民の皆さん。私は内閣総理大臣です――現在この国は天王寺一派のクーデターによって――」


 そしたら天王寺 イチゼンに殴られた。


「台本が違う! 何を勝手に喋ってるんだ!」


「ならこう言ってやろう――国民の皆様へ告げる。どうかこの無法者達を倒してくれ!! 手を取り合い、団結して立ち向かってくれ!! それが私の願いだ!!」


「ごちゃごちゃウルセえんだよ!!」


 そう言って今度は蹴り飛ばされた。


「この国の国民にそんな度胸があるワケねえだろ!? あったら学生を戦場送りにして平気な顔して戦わせちゃいないもんな!!」


 言わせておけばこいつは――


「お前のような輩には分かるまい!! その無念さと悔しさを!! お前みたいな出来損ないのアホどもに国を任せた自分達の愚かさを!!」


「そんなに死にたいんだな――!!」


 拳銃を取り出すイチゼン。

 とうとう私もここまでかと思った。


「待て、そいつにはまだ利用価値がある」


「親父――」

 

 何と言う数奇な――まさかゴウトクに生かされてしまうとは。

 運が良かったと思うよりも恥ずべきことだと思った。 


 少年少女達よ――


 後は君達に任せるしかないのか――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る