第34話


 そうして解体されたミノさんを回収した後、メインの厨房にお邪魔する。


「「広っ」」


 ピッカピカのデッカデカ。そして目に付く、中央に置かれた巨大装置。


「これが、」


「はい、ご依頼されてましたミンチ肉専用の魔法道具ですね」


 もろミンサーだ。流石異世界職人、これを1日で作るのか。


「こちらに、予め必要となる調味料と原料を用意させていただきました」


「っえ、こんなに沢山⁉︎良いんですか⁉︎」


「勿論です。それとこちらが冷却用魔法道具で、調理器具全般はこちらの棚に用意しております」


「お、おお!」


 至れり尽くせりとはこのことか。パレスさん大好き!怖いとか言ってごめんなさい!


 ――俺はミノさんの肉塊をミュゥから受け取り、ミンサーにぶち込む。問題なく稼働する魔法道具に、汗を拭った。


「……問題ないようですね」


「はいっ。ありがとうございま」


「はいおにーさん」


「っおうサンキュ」


 受け取り、ぶち込む。


「っふぅ、あの、冒険者とか行商人って荷運びどうしてるんすかね?全部馬車ですか?」


「まぁ、基本的にはそうですね。転移魔法陣などもありますが、高ランク冒険者や大企業以外は保有できませんので」


「そうですか〜。サンキュ」


「ん〜」


「……」


 パレスさんが白い髭を撫で、少し間を置いて口を開いた。


「これは1部の商人と冒険者しか保有していないのですが、中にはこんなスキルもございます」


 そう言ったパレスさんは虚空に手を突っ込み、ハンコを取り出した。それはまさにチートの中のチート、創作物の主人公はもれなく全員持っていた最強格のスキル。


「っアイテムボックス⁉︎」


「おや、ご存じでしたか」


 俺は勢い良く膝をつき、尊厳など全て捨てて頭を下げる。


「教えてはもらえないでしょうかっ⁉︎」


「おやおや。フフフ、頭を上げてくださいハルヒコ殿。勿論教えて差し上げますよ」

「マジですか⁉︎」


「マジです」


 俺は微笑むパレスさんに手を借り立ち上がる。


「しかしこのスキルは少々特殊でしてね、自力で取得することは不可能。商業ギルドに伝わる相伝のスキルなのです」


「お、おぉ」


「条件は商業ギルドに所属していること。加えその者が信頼に足る人物であること。世界でも限られた者しか保有していない、希少スキルです」


「おぉおおお!」


 ますます欲しい!


「ですので継ぐ前に、その価値を理解していただきたいのです。無闇矢鱈と広められると、私とハルヒコ殿の首が飛びますので。物理的に」


「っヒ、」


 俺は首に手刀を添えられ、唾を飲む。


「……ふふっ、理解していただけようで何よりです」


「は、はい」


「それでは手を」


「あ、はい」


 パレスさんが俺の手を握ると同時に、無色の光が身体を包み、すぐに消えた。


「お、終わりですか?」


「はい終わりです。冒険者プレートを見ていただければ分かると思いますよ?」


「……あ、ほんとだ」


 保有スキルの欄に『アイテムボックス』が追加されてる。え、嬉しい、嬉しい⁉︎


「ほ、本当にありがとうございますっ。夢が1つ叶いました‼︎」


「ふふふっ、喜んでいただけたようで何よりです。私のハルヒコ殿への信頼ととっていただければ幸いです」


「とります!もう馬車馬の如く尽くします!」


「フフっ、期待していますよ。最後にこれを、商業ギルドのギルドプレートです」

「ありがとうございます!」


「では、私達はこれで。御2人のご活躍、遠くから見させていただきますね?」


「勿論!」「うぃ〜」


 2人を見送った後、俺はネックレスに2つのギルドプレートを通し、


「うっし、ミュゥ、忙しくなるぞ!」


「おー」


 調理に取り掛かった。


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