第33話
そうして到着したのは、大通りに面するデカいレストラン。え、ここ……。
「お、いらっしゃいましたか」
「あ、こんにちは。」
中から出てきたパレスさんが俺達に微笑む。
「はいこんにちは。いかがですかな?御2人に相応しい一等地をご用意いたしました。
ここでしたら、クエストの行き帰りの冒険者を捕まえるには最適です。
外観と内装は希望通り、木や石を基調としたものに作り替え、厨房は先の料理に適した物に改装いたしました。
レストラン内の客席は1階に50、2階に50、裏のバルコニーに20を用意しております。
いかがでしょう?」
俺はあんぐりと口を開けたまま、ピカピカの新店舗を見上げ、そしてニコニコ顔のパレスさんを見て、また店舗を見る。
これ、いくら掛かってるんだ?なんか怖くなってきた、俺怖い、この人怖い。
「す、凄いですね……」
「お気に召したようで何よりです」
「それであの、1つ良いですか?」
「はい」
「ここって、昨日まで他のレストランありましたよね?」
そうなのだ。ここにはつい昨日までデカい高級レストランが立っていた筈なのだ。研究の際俺達も行こうとしたが、ドレスコードに引っかかって門前払いされたのを覚えている。
パレスさんは白い髭を撫でながら微笑む。
「あぁはい。ありましたね」
「い、いずこへ?」
「廃業させました」
⁉︎怖い、というかヤバいよこの人‼︎溜息を吐く眼鏡のイケオジに俺は戦慄する。
「ここの店舗ですが、元は大手飲食グループに無理矢理ねじ込まれた物なのですよ。ここは冒険者街道なのに価格設定も上流階級向け、おまけに無駄なプライドで客足を遠ざける。
あの時は先代マスターの顔を立てましたが、そろそろ我慢の限界だったのです」
だ、だいぶ溜まってたんだな……。眼鏡の奥にギラつく光を見れば分かる。
「潰す口実が欲しいと思っていたところに、ハルヒコ様という天啓が現れてくださいまして。いやはや、感謝しておりますよ?」
「え、それ俺復讐とかされません?嫌なんですけど、平和に暮らしたいんですけど、」
「売上で上下がはっきりすれば、どんな業種であれギルド指示には従わざるを得ないですので」
「……それ、俺らがレストランより売上出せなかったら」
「……頑張りましょうね?」
微笑むパレスさんが、今の俺には悪魔に見えるよ。この人は策士だ。人を掌の上でコロコロする生粋の策士だ。必要ないと判断されたら終わる。俺も消されてしまう。
「が、頑張りますっ!」
「はい頑張りましょう」
ダラダラと垂れる汗を悟られないよう、ガッシリと握手を交わした。
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