第17話 みゅぅ


「く、クエストお疲れ様です。結構狩りましたね。……はい、こちらが報酬の銀貨1枚と大銅貨2枚、銅貨5枚です」


「あぁざす。全部こいつが、狩ったんすよ」


「そ、そうなんですか」


 汗だくの俺を心配する受付嬢さんの目が、隣に立つボロい外套をを羽織るミュゥに向けられる。


「それで、そちらのお嬢様は?」


「ミュゥです。おにーさんの嫁で〜す」


「……は?」


 固まる受付嬢さん。


「あ、嘘なんで気にしないでください」


「え、あぁはい」


「こいつ虚言癖あるんですよ」


「あらまぁ、背伸びしたい年頃ですもんね〜」


「ちょっと!」


 爪先立ちでカウンターから顔を出そうとするミュゥを下に押し込み、俺は今貰った銀貨をトレーに置く。


「今から冒険者登録って出来ますか?」


「はい、大丈夫ですけど。ミュゥ様を?」


「はい、お願いしたいです。ミュゥも良いよな?個人証明書が無いと、何かと不便だし」


「ん〜、」


「?、嫌か?」


「……んーん。分かった。いいよ〜」


 一瞬考えていたミュゥだったが、すぐに大きいツノを縦に振った。


「てことで、お願いします」


「はい!ではミュゥ様、あちらの魔法道具に入っていただけますか?」


「……、」


 デカい装置を見たミュゥが、少しだけ不安そうに俺をチラチラと見てくる。

 ……はぁ、


「すみません。俺も一緒に入って大丈夫ですかね?」


「ふふっ、構いませんよ」


「ほら行くぞ」


「うんっ」


 俺はポケットに手を突っ込み、ミュゥに袖を掴まれたまま装置に入った。


 数秒後、俺達の身体が光る。


「終わりました!あ、ハルヒコさん、Lv2になったんですね!おめでとうございます!」


「え、マジすか?ほんとだ」



 ハルヒコ・タナカ

 Lv:2

 魔力:D

 膂力:D

 敏捷:D

 体力:D

 知性:C

 信仰:S

 職業:ダークプリースト

 保有スキル:ダークヒール

 獲得可能スキル:無し

 保有スキルポイント:12



 ホーンラビットを倒したからだろうか。嬉しい。


「相変わらずステータスはナメクジですけど、ダークヒールも覚えたようですし、いいですね!ちゃんと成長していますね!

 4日もホーンラビット1匹狩れなかったので、流石にダメだと思ってましたけど!」


「まぁ、はい。……え、受付嬢さん俺のこと嫌いですか?」


「え?いえ?」


 ああはい、さいですか。


「ミュゥのはミュゥのはっ?」


「はい、こちらですね」


 俺達は続いてミュゥのステータス用紙を見る。



 ミュゥ・ドラグレイヴ

 Lv:15

 魔力:S

 膂力:D

 敏捷:D

 体力:D

 知性:C

 信仰:S

 職業:エンハンスエンチャンター

 保有スキル:エンハンスエンチャント・フルマジック(初級)・マーシャルアーツ(初級)

 獲得可能スキル:無し

 保有スキルポイント:156


「……は?」「……は?」「……どう?」


 なぜか心配げなミュゥの横で、俺と受付嬢さん、覗き見に来た他の職員が口をあんぐりと開ける。


 なんか凄そうな名前がズラリと並んでいる。俺でも分かるぞ。


 これは、いわゆるチートってやつだ。

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