第5話 誰が肉壁だ

 ハルヒコ・タナカ

 Lv:1

 魔力:D

 膂力:D

 敏捷:D

 体力:D

 知性:C

 信仰:S

 適正職業:ダークウィザード・ダークプリースト・シーフ・肉壁

 獲得可能スキル:無し

 保有スキルポイント:0


 ……むむ?


 俺は目を擦り、もう1度用紙を見つめる。


 ……むむむ?


「あのー、測定値の最低ってZですか?」


「Dです」


「ダークナンチャラって結構レア職業だったりします?あと肉壁って何です?」


「いえ、心に陰を背負っている人によく見られる職業ですね。ですが回復を行える神聖職は貴重ですよ、まぁ前線には出れませんが。肉壁は肉壁です」


 あっれれぇ〜おっかしぃぞぉ〜⁉︎

 俺はガックシと膝から崩れ落ち、本日2つ目の予想外に口をパクパクする。


 そんな俺を無視し、受付嬢さんが思案げに用紙を見る。


「しかし珍しいですね。今時Lv1でスキルポイントが0なんて。普通は10歳になったらLv3くらいにはなっている筈なんですけど。モンスターと会ったことなかったんですか?」


「……はい、っ」


 悪意のない口撃に声を絞り出す。

 てことは俺の強さ10歳の子供以下ってこと?下手したらさっきの少女と互角ってこと?俺この世界怖くなってきたんですけど?


 プルプルと震え出した俺を受付嬢さんがアワアワと立たせ、ソファに座らせてくれる。何この人優しい好き。


「そ、そんな落ち込まなくても大丈夫ですよ!基本的な能力は赤子同然ですけど」


 ゲフっ


「でもほら!信仰がSなんて凄いですよ」


「……ほんと?」


「ほんとです!あらゆる精神攻撃を無効化出来ますし、強い信仰心から強力な神聖魔法を使うことも出来る筈です!いつか。

 それにプリーストはクレリックの上級職です!いきなり上級職なんて凄いですよ!」


「ぉ、おおっ」


「……でも何で信仰値だけこんなに高く。……職業のダーク系統や、隠れることを得意とするシーフに、肉壁……ずっと1人ぼっちで、誰にも相談できず、この世を恨んで、ずっと神に祈っていたのね。

 何て可哀想な子なのっ」


 ゴッフッッ


 はい褒め言葉じゃありませんでした。褒め言葉に見せかけた戦車砲でした。クリティカルヒット致命傷ですそれ以上はやめてください。


「ぅ、ふぅ、……危うく死ぬところだった」


 俺は吐血した口元を拭い、用紙を睨む。


 なんで異世界に来てまで隠キャボッチを哀れまれなきゃならんのだ。ダークのダークは隠キャの隠で改め隠キャプリーストってか?やかましいわ!


「受付嬢さん、この中で俺に1番適している職業何ですかね?」


「そうですね。やはりダークプリーストかと。神聖職の使う神聖スキルは魔力を必要としません。その代わり信仰値が大きく影響するのですが、ハルヒコ様ならLv1でも足手纏いにはならないと思います」


 ……この人ちょいちょい言葉に棘あるな。そろそろ泣くぞ?


「じゃあダークプリーストで」


「でもちょっと待ってください。ダーク系統の職業は効果が大きい代わりに、使用者に様々デバフが掛かります。それはもう様々な」


「デバ⁉︎」


「はい。ですからもう少し慎重に決めるべきです。因みにこの職業は自身を顧みない邪教徒に人気です」


「邪きょ⁉︎」


 神様俺何か悪いことしましたかねぇ⁉︎


「ダークプリースト自体は強力な職業ですが、討伐系クエストは仲間を募ってからの方がいいかと。

 いかがいたしますか?保留でも構いませんよ。職業は変更出来ませんので、慎重にです」


 俺は少しだけ考え、ふっ、と諦めたように笑う。


「ダークプリーストでお願いします」


「いいのですか?デバフが嫌でしたらシーフという選択肢もありますが、まぁ肉体能力値がナメクジなので、相当な訓練が必要ですが」


 だから歯に絹を……まぁいい。

 回復役ってのは創作物の中じゃ最強職の中の1つだ。勇者になれなかったのは残念だが、俺は勇者すら超えるヒーラーになってやるさ!


「構いません!ダークプリーストでお願いします!」


「分っかりました!」


 受付嬢さんが用紙を装置に押し当てると同時に、俺の身体が若干光った。

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