第4話 ……むむ?


 俺は木製の大きな門の前に立ち、1つ深呼吸をした。


 ここから始まるのだ。俺の冒険者としての人生が、っここから始ま


「入らないのかい?」


「あ、すみません、……お先どうぞ。はい」


 冒険者パーティ数人に微笑ましいものを見る目を向けられ、俺はササッ、と横に避ける。

 彼らの後に続き、俺もギルドの中へと足を踏み入れた。


「…………はわぁ」


 ひんやりとした空気。


 石造りのシックな室内。


 天井にぶら下がる巨大なシャンデリア。


 鼻を抜ける石や紙、鉄、酒、香辛料の混ざった香り。


 耳を打つ大通りとは違った野生的な喧騒。



 ……これが、冒険者ギルド。あの、冒険者ギルド!



「……」


 ……気付けば、俺は泣いていた。


 涙をポロポロと零すまま、受付に足を運ぶ。


 カウンターの奥で受付嬢さんがニコリと微笑んでいる。えめっちゃ可愛い。好き。


 金髪碧眼の超絶美人。後ろに結ったポニーテールが微笑みに合わせて揺れ、ピッチリとしたギルドスーツがボディラインを強調する。え可愛い好き。


「こんにちはぁ、ぅう、」


「こ、こんにちは。本日はどのようなご用件でしょうか?……迷子ですか?」


「違いますぅ、ぅう」


 受付嬢さんの笑顔が若干ぎこちない気もするが、気のせいだろう。

 俺は涙を拭き、握りしめすぎて湿った銀貨をカウンターの上に置いた。


「冒険者になりたくて、来ましたっ」


「ああ、冒険者登録の方ですね!ようこそ冒険者ギルドへ!」


「はい!」


「ふふっ、登録料はいただきましたので、ではこちらの書類にお名前の記入をお願いします」


「はいっ」


『ハルヒコ・タナカ』と。

 フハハ!異世界文字も書けるぞ!最高の仕様じゃないか‼︎ありがとう神様‼︎


「ハルヒコ様ですね?では次に、あちらの生体認識魔道具の中へどうぞ」


 そう言って受付嬢の可愛いお姉さんが指差した先には、何やら厳つい魔法装置が置かれていた。


「こ、これは?」


「はい。中に入った者の生態情報を、肉体、魔力、潜在的才能など、あらゆる観点から測定する装置です」


「すっげ……」


 よくラノベに出てきた魔力測定器みたいなもんか。


「こちらで測定された内容から、適正職業や獲得可能スキル、現時点で保有しているスキルポイントなどが分かります」


「職業!スキル!」


「はい。それらについては後程話しますね」


「はい!」


 俺は促されるまま装置の中に入り、ドキドキのうるさい心臓の音を聞きながら目を瞑る。


 きっとここでステータスオールSとか、職業『勇者』とか出てギルド内が驚愕に包まれるんだ。

 いや、俺の圧倒的な魔力にこの装置がぶっ壊れるかもしれない。そんでもって受付嬢さんが、あ、ありえないです!魔法全属性適正なんて見たことない!結婚して!とか言っちゃったりして、デュフ、デュフフ


「終わりましたよ〜」


「あ、はい」


 装置から出た俺は、用紙と睨めっこしている受付嬢さんに恐る恐る尋ねる。


「それで、あの、結果は?自分何勇者ですか?」


「(勇者?)はい、こちらですね」


 俺はカウンターに置かれた用紙を覗き込む。



 ハルヒコ・タナカ

 Lv:1

 魔力:D

 膂力:D

 敏捷:D

 体力:D

 知性:C

 信仰:S

 適正職業:ダークウィザード・ダークプリースト・シーフ・肉壁

 獲得可能スキル:無し

 保有スキルポイント:0







 ……むむ?

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