最終章 邪宗門

終章

 ……砂浜で、仮面を拾い上げたのは、浅黒い顔をした少年だった。その側には、色白の少女が寄り添うように立っている。幽体である少女の姿は、彼らには見えていないようだった。幽霊少女は、膝を抱えたまま、彼らを食い入るように見つめていた。


「あれ? どうしてこんなところにガラササマの仮面が落ちてるんだろう?」

「ケーサツに届けた方が良いんじゃないかしら?」

「うん。そうしよう、レオナ」

「それが良いわ。行きましょう、麗央」


 あれ……?


 2人が名前で呼び合うのを聞いて、幽霊少女は、何故か自分の瞳からほろほろと涙が溢れるのを感じた。


 やがて2人は仮面を拾い、手を取り合って砂浜を後にした。


 ……そっか。


 2人はもう、離れ離れにならなくて済むんだ。


 それを見届けて、幽霊少女は、何だか嬉しいような哀しいような、胸の奥をぐちゃぐちゃに搔き回されたようになった。


 いつの間にか少女の隣にガラササマが立っていた。少女はガラササマの腕に抱かれて泣いた。どうして泣いているのかも分からない。だけど涙だけがほろほろと溢れ落ちて来る。その間、日差しが優しく柔らかく少女たちの背中を撫でていた。


 風は気まぐれだ。大粒の涙も、遠い哀惜も、島の守り神も生贄の少女も……やがて全て、穏やかな風に包まれて、静かに消えて行ったのだった。

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探偵羊 -ガラサの島の殺人- てこ/ひかり @light317

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