第6話公爵子息5
「結論を言う。お前が取れる選択肢は二つだ。一つは、ナディア嬢と別れて修道士になるか、ナディア嬢と共に子孫を残さないための処置を施して幽閉されるかだ」
「ちょ、ちょっと待ってください!何故、そんな事をしないといけないんですか!?」
「お前達が『心から反省しています』とアプローチするにはそれ位しないと意味が無いだろう」
「誰にアプローチするんです!?」
「勿論。両国の王家に、だ」
「ふざけないでください!!」
「誰もふざけて等いない。真剣だ」
「公爵家の跡を誰が継ぐんです!僕しかいないでしょう!」
「確かに息子はお前一人だ。が、
「……他家の子達ではないですか」
「私の娘、お前の姉
「何を勝手に!!」
「勝手はどっちだ!」
「何なんですか。そんなにキャロラインと婚約解消したのが悪い事なんですか?ただナディアを愛しただけじゃないですか。愛する女性と結婚するのがそんなにいけないんですか?」
「やり方を間違えたんだ」
「キャロラインだって素直に応じたんですよ?」
「“応じさせた”の間違いだろう。それにさっきから聞いていればキャロライン嬢を呼び捨てにしている。お前、婚約を解消した意味を理解しているのか?彼女の事は『キャロライン嬢』、もしくは『ロードバルド侯爵令嬢』と呼べ。もう他人なんだ。他の者が聞いたらよけいに心証を悪くする。いや、もう悪くさせているな。昨日の茶会でも何度も呼び捨てにしていた。あれで随分と他の貴族から『次代の公爵失格』の烙印を押されているんだ。自覚しろ!!」
「僕を跡取りから外すなんて……それでも父親ですか」
親なら息子の僕の味方をするべきだろう。
他の貴族の顔を伺う必要なんてない!
「公爵家から放逐させないだけ有難いと思え!お前達の態度が悪過ぎて国際問題に発展している事をいい加減理解しろ!!王女殿下の件は諸外国にも既に知られている。もう公爵家だけの問題ではない!公爵家だけでなく王国そのものに“傷”がついた。諸外国の大使達から散々に酷評されている状況なのだ!!」
「だからって……」
「もう何も言うな。これは既に決まった事だ。一ヶ月だ。一ヶ月の間謹慎していろ。その間に全てを終わらせる。お前は自分の事だけを考えていればいい。どちらを選んでも構わん。学園の卒業までに決めればそれでいい」
「学園に登校できるのですか?」
「謹慎が終わり次第な。流石に卒業間近で退学する訳にはいかん。だが、今回の件は既に知られている。お前にとっては針の筵かもしれん。それでもいいなら登校しろ。無理には勧めんがな……」
「……はい」
何故だ?
どうしてこんなことになったんだ?
僕とナディアの未来は?
希望に満ちた未来が音を立てて崩れていく。
何がいけなかったんだ。
一ヶ月後、学園に登校した僕を待っていたのは愛する恋人の事件だった。
「ナディアが襲われた!?」
謹慎中の間にナディアが何者かに襲われた。
正確には襲われかけた、というべきだろうが彼女が誘拐されそうになったのは確かだ。幸い、警察官がナディアを守ったお陰で彼女は無事だった。誘拐犯を取り逃がした事は遺憾だが、犯人の目星はついている。
こんなマネをするのはキャロラインだ。他に考えられない。僕に婚約を解消された腹いせにナディアを狙ったんだろう!なんて姑息な女なんだ。だから僕から愛されなかったんだ!
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