第24話 本日のスペシャルゲストは……?

 カルチュアの案内を受け、俺達は城内を進んでいく。

 至るところには甲冑に身を包んだ衛兵達が直立不動で待機しており、パーティーの準備で忙しそうなメイド達が行ったり来たりしている。


「本物のメイドさんだ……!」


「マスターはああいう格好がお好きなんですか?」


「好きというか嫌いというか。男にとってのロマンというか」


「……ふぅーん? メイド服ねぇ」


「ひそひそ。ルディス、今度マスターを誘惑する時にはメイド服で攻めましょう」


「ひそひそ。1日たっぷりご奉仕プレイね……」


「全部聞こえてるぞー」

 

 しかし、ピィとルディスがメイド服を着るのは実に見てみたい。

 美少女ロリメイド。なんとも反則的な響きじゃあないか。


「ずっと気になっていたんだが、その子達はリュートの妹なのか?」


「妹というか……まぁ、家族か」


「将来のお嫁さんです!!」


「将来の妻……といったところかしら」


「ほう……? ならば我は愛人に立候補しようか」


「いやいや、乗らなくていいって」


「……わりと本気だったんだがな」


 そんな会話を繰り広げていると、一人の衛兵がこちらに近付いてきた。


「カルチュア様!」


「む? オズボーンか」


 やってきたのは、武道大会の予選を担当していた試験官。

 たしか……近衛騎士隊長なんだっけか。


「おや、リュート殿もご一緒でしたか」


「あ、どうも。予選ではお世話になりました」


「お世話……ははは、あしらわれただけでしたが」


 オズボーンさんはスキンヘッドの頭をポリポリと掻きながら、気恥ずかしそうに笑う。

 あの時は俺がレベル0だという油断もあっての事だと思うので、ああいう結果になったのも仕方ないとは思うけど。


「まさか優勝までされるとは。流石は、カルチュア様が婿候補にお選びになられた方だ」


「婿候補……って」


「おや、ご存知ありませんか? この国ではすっかり、リュート殿は有名人ですぞ」


「ええ、そうみたいですね。内容は多少問題ですけど」


 前代未聞となる、レベル0の武道大会優勝。

 それだけでも大きなニュースとなりえるが、より一際民衆を騒がせたのは……そのレベル0に第3王女が求婚をしたというもの。

 武道大会の決勝戦で王女が庶民に子作りをねだる、というインパクトは相当なものだったようで。

 噂には尾ヒレが付きまくり、街中で「レベル0が王女を孕ませた」「すでに二人の可愛いご息女がいる」だのと、盛り上がっているらしい。


「いずれ事実になるから問題ない」


「ならないって」


「フッ、つれない男だ」


「世界広しといえども、カルチュア様のご求愛を断るのはリュート殿くらいなものでしょうな。それでは、またいずれ」


 オズボーンさんは頭を下げると、そのまま立ち去っていく。

 俺達もそのまま、パーティー会場へと向かうのだった。


【レストーヌ城 パーティー会場】


 豪華な料理がふんだんに並べられたテーブル。

 優雅な立ち振る舞いで談笑を繰り広げる貴族達。

 会場の端で、心地よい音楽を奏でるオーケストラ。


「……マスター!! あの料理、とっても美味しそうです!!」


「相変わらず、アンタは食い意地がすごいのねぇ」


「ピィ、ルディス。遠慮なくご馳走になってくるといい」


「はーい! 全て食らい付くしてやります!!」


「こら、一人で勝手に行くんじゃないわよ。もう……」


 一目散に料理を取りに行くピィと、呆れた顔でその後に続くルディス。

 そんな彼女達の後ろ姿を見守る俺の心境は、すっかり父親のソレである。


「おい、あそこでカルチュア様と一緒にいる男は……?」


「レベル0……間違いない。あれが武道大会で優勝した者か」


「信じられないわ。あんな冴えない男が、カルチュア様を倒しただなんて」


 ピィ達の元気な声で、こちらに注目の視線が向いたのか。

 ざわざわと、俺に関する話題が会場内に広がりつつある。


「すまないな、リュート。貴族というのは代わり映えしない日常に辟易としていて、流行りの話題にすぐ食らいついてくるのだ」


「俺は別に構わないよ。悪い噂というわけじゃないし」


 ちょっと方向性は予想外のものだったが、カルチュアのおかげで俺の知名度は一気に爆上がりしたと言っていいだろう。

 これでレベル0にも強い者がいるという情報が出回り、今後俺が活動する上で役に立つ機会も多くなるはずだ。


「しかし、本当に貴様には驚かされる。レベル0であの強さ……地道にレベルを積み上げてきた我の誇りがズタボロにされてしまったぞ」


「レベル87……か。その若さで、かなり苦労してきたんじゃないのか?」


「ああ、いくら女神の祝福を持つとはいえ。ここまで上り詰めるのは相当に苦労した。しかし、あの目的を果たす為ならば……惜しくはない」


「目的?」


 俺が詳しく訊ねると、カルチュアは少し悲しそうに目を伏せる。

 それから、消え入りそうなほどに小さな声で……呟く。


「……いや、祝いの席で話すような内容ではない。またいずれ話そう」


「ああ……分かった」


 女心に鈍感な俺でも、こればっかりは流石に分かる。

 この話題はカルチュアにとって、とてもデリケートな問題なのだろう。


「うまうま! ルディス、このカルパッチョ美味しいですよ!!」


「ああもう、はしたない! 淑女たるもの、もっと優雅に食事出来ないの!?」


「そんなチマチマノロノロと食べていたら、日が暮れますよ! ほら、ルディスの分も頂きですぅー! ぱくぱくぱくっ!!」


「んぁーっ!? それ、アタシが後で食べようと取っていたのに!! 返しなさいよ!!」


「ごっくん! もう飲み込んじゃいましたもーん!」


「ああああああっ!! 負けるもんですかぁー!」


 こっちのしんみりとした空気も知らずに、ピィとルディスは競い合うように料理を食べている。

 うぅっ! 周囲の貴族方の視線が痛い。


「くすっ。本当に仲睦まじいのだな、あの二人は」


「ああ、なんだかんだ言っても姉妹みたいだよ」


「姉妹……か」


「カルチュア? 何か……」


「いや、なんでもない。それよりもリュート、早速だが貴様の表彰式を行うぞ」


 俺の言葉を遮ったカルチュアは、右手の指を高く掲げてパチンと鳴らす。

 すると会場内の照明が段々と暗くなっていき、オーケストラ達の演奏も徐々にフェードアウトしていく。


「むぐががっ!? まっふはひはっひゃひはひは!!」


「口に物を入れながら喋るんじゃないわよ、はしたない」


 しばらくざわつきはしたものの、やがて会場内には一時の静寂が訪れる。

 それを待っていたと言わんばかりに、パッとスポットライトの明かりが俺の頭上から降り注いできた。


「皆様お待たせ致しました! 本日のパーティーのメインゲスト! リュート・アンドウ様のご登場です!!」


 よく見ると会場の隅にもスポットライトが当てられており、そこには見覚えるのある審判のお姉さんがマイクを片手に口上をしている。

 どうやらこのパーティーの司会進行を任されているようだ。


「リュート選手は100年にも及ぶガストラ武道大会の歴史において、史上初のレベルゼロでの参加者! そしてそのまま優勝を果たしたという規格外の男!! 城内最強と謳われるカルチュア王女でさえも、この男には届きませんでした!!」


 大会の時となんら遜色の無い熱量で、俺を紹介する審判のお姉さん。

 そしてパーティーの参加者達も次々と、俺に賛辞の拍手を送ってきてくれる。


それではリュート選手! カルチュア王女より、優勝の楯と賞金の授与を行います。さぁ、壇上へお進みください!」


「う、うぃっす……」


 カチカチに緊張しながら、会場奥に位置するステージへと向かう。

 その間、あんなにも料理に夢中だったピィ達も大袈裟なレベルで声援を掛けてくれた。


「マスタァー!! カッコいいですー! 最高ですー!! 大好きですー!!」


「ねぇ、アイツ悪くないでしょ? ふふっ、アタシの担い手だから当然よ」


「うぅ、恥ずかしい」


 人前で表彰される経験なんて、小学校低学年の頃に絵画コンクールで銀賞を貰って以来となる。

 武道大会で優勝してもなお、このあがり症はまだ改善されていないようだ。


「リュート。本当におめでとう」


 壇上ではいつの間にか先回りしたらしい、カルチュアが立っている。

 彼女はその手に黄金に輝く盾と、黒いマネークリスタルを持ちながら……俺が来るのを今か今かと待ちわびていた。


「あ、ありがとう」


「貴公、リュート・アンドウは第100回ガストラ武道大会において、類まれなる強さを発揮し、己の最強を証明した。よってこの栄光の楯と賞金を授与する」


 穏やかな笑みを浮かべ、俺に賞品を差し出してくるカルチュア。

 一際大きくなる拍手の中、俺はそれに手を伸ばそうとして……気付く。


「……ん?」


 拍手の音がピタリと止んだ。

 いや、それだけじゃない。

 周囲からどんどん色が失われ、モノクロの世界へと変わっていく。


「これは……ピィ?」


 メニュー画面を開いた時の制止時間。

 そう判断した俺は振り返り、ピィになぜこのタイミングでメニューを開いたのかを確認しようとする。


「「…………」」


「え?」


 しかし……ピィもルディスも、笑顔でこちらを見つめたまま硬直している。

 冗談のつもりか? いや、そんな事をする意味がない。


「どうなって……」


「知りたいですか?」


「!?」


 突然ポンと肩を叩かれ、俺は驚きながら背後を見る。

 そこに立っていたのは……ああ、忘れもしない。あの憎たらしい澄まし顔。


「お前は……!!」


「お前、ですか。やれやれ、これだから礼儀を知らぬ愚かなる人の子は……」


 人間離れした美貌、スタイル、声。

 この世のありとあらゆる美を集結して形作られたと言っても過言ではない存在。

 しかし、その中身はハラワタが煮えくり返るほどに……クソッタレな女。


「女神……インポティ!」


「様を付けやがれ、ですよ。クソザコメンタル非モテ童貞ロリコン転生者さん」


 俺を死に追いやる原因を作り、この世界に俺を転生させた女神が……今こうして再び、俺の目の前に姿を現したのだった。





【全能なる女神インポティ様が焦りに焦って、必死に命乞いをしながら土下座するものの、なんだかんだで全てを失う展開になって、それでも頼れる相手がリュートしかいなくて泣きながら靴を舐めて媚びへつらうようになるまで………………残り2話くらい】



<安藤流斗(レベル0)>>

【体力】3001 【力】 1001 

【技】 1001 【速度】1001 

【防御】3001 【魔力】1

【幸運】1001 【魅力】3001


【武器適正】

・斧 1001(SSSランク)

・剣&槍&弓&杖 各1(Gランク)


【所持スキル】

『カード擬人化(20000P)』

・ポイントカードに肉体を与える事が出来る)

『アックス擬人化(0P)』

(斧に肉体を与える事が出来る)

『状態異常耐性レベル5(5000P)』

(ありとあらゆる状態異常を完全に無効にする)

『メスガキ理解らせ(消費P1000)』←NEW

(生意気なメスガキを理解らせる)


【残ステータス・スキルポイント】59999


【所持金】

・約580万ゲリオン(1ゲリオン=2円)

(宿代食事代で定期的に消費されます)

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