第16話 国連日本支部



 日本に戻って三ヶ月。


 ほんの数十日寝ていただけなのに、肌は青白くなり、筋肉は目減りしていた。


 ひと目で、不健康だとわかってしまう容姿になっている。


 自分の足で歩けるようになってからは、健康的な肉体を取り戻すことを優先した。


 病院の外で日光を浴びながら散歩をしたり、足の筋力を戻すためにひたすら鍛えた毎日。


 努力の成果が出て、軽いランニングもできるようになってきた。


 きちんと三食食べて、運動で汗を流し、教科書で勉強をする。とても健康的な生活を送っている。



 国連日本支部の敷地内地図を貰ったから、屋上に出て確認してみることにする。


 エレベーターを降りて真っすぐ歩くと、正面には東京湾が広がっている。


 10日くらい前、はじめて屋上に出た時の場所だ。


 今日も天気がよいから、見晴らしがいい。


 地図を広げる。


 左方向には大型ジェット機でも離発着できそうな、長い滑走路が3本見える。


 その付近には、ヘリポートもたくさんあるようだ。


 航空機の格納庫は、建物のサイズが大きすぎてスケール感が狂いそうになる。


 さらにその先、肉眼でははっきり見えないが、千葉方面の水上に埋立地がボンヤリと見える。


 そこに出現した魔力渦の近くに、俺が倒れていたそうだ。



 右側には港があって、戦艦っぽい船や、大型の輸送船が何隻も停泊しているのが見える。



 敷地内にはたくさんの建物が建っているけど、立入禁止の建物がとても多い。


 この埋立地全体が国連の所有地で、一般人は勿論、誰であれ許可なく立ち入ることは禁止されている。


 日本支部と言っても、この国には魔力研究所の本社があり、国連にとっても重要な地だ。


 上層部の半分は日本支部に居るそうだし、軍の規模はアジア最大だ。


 国連が、日本に支部を作るから土地を融通してほしいと申し入れた時。


 狭い島国の日本には、国連が要求した広さの土地は無かった。


 当時、海外への人材流出で人口が減り、国内のさまざまな施設が閉鎖に追い込まれた。


 そこで目を付けたのが、この埋立地だった。


 レジャー施設を中心とした産業が集まっていたが、ほとんどは閉鎖されていた。


 それを、国がすべて買い取って、この埋立地を国連に差し出したそうだ。


 国連はメガフロートで補強して、点在していた埋立地を繋ぎ、広い敷地を確保した。


 とは言え、軍の空港や港が併設されているから、土地の広さがまったく足りないようで、拡張工事が現在も続いている。



 おっと、ここに来た目的を忘れていた。


 明日から、軍の訓練施設を借りてのリハビリが始まる。


 魔法の使用を含めたリハビリの許可が出たから、その場所を確かめるため屋上へ上がったんだった。


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