五通目 12月18日

親愛なる獅子



梟とか言わないでください。

裏の仕事についてはあくまで裏です。ちゃんと隠して貰わないと今後に支障があります。


修業してた頃、修行仲間から散々揶揄われたことを思い出しました。

「両面オイレ」とか「100%オイレ」とか、言ってきたやつ全員ぼこぼこにしてやりましたけどね。


そもそも梟=暗殺者っておかしくないですか。森の賢者捕まえて暗殺者呼ばわりとか。鴉にでもしておけばいいのに。

あなたも知っての通り、オイレは本名です。確かに梟という意味ですが、正真正銘親が付けた本当の名前です。

裏の仕事はただの巡り合わせです。


というかですね、この微妙に遠回しな書き方、続けた方がいいですか?

見る人が見れば一発で分かりますよね。隠し方も微妙過ぎて全然隠せてません。

鹿肉の腸詰とか。


また梟に襲われました。あ、鳥の方です。手紙届けて来たやつ。

前回は右耳。今回は左耳を齧られました。少し持っていかれました。

こいつ、きっと雄だと思うんですよね。

ムカつくんで本当にそろそろ殺っていしまいそうです。

次に襲ってきたらとりあえず片足折ります。飛ぶのに足いらないでしょ。


俺の服に何してくれてんのですか。もう絶対に、二度と、触らないでください。


人形はもう好きにしてください。

ですが、俺のことをその侍女にどう説明しているんですか?

扉横で永遠に固まり続けてるオイレくん人形のことを、何と?


侍女と仲良くなりたいのは結構ですが、本当に信用できる者か、見極めは慎重になさってください。

日陰者であれ、皇女であるあなたを快く思わない者や、何らかの目的を持って近付く者は少なくありません。

特に、もしその者が梟であればとても危険です。俺が戻るまで、誰も近付けないで欲しいぐらいです。

どうしても話したいのであれば扉越しにしてください。最初は天候の話題が無難で適していると思います。


食事に毒を盛られることも考えられます。

本当に、細心の注意を払ってください。数日ぐらいなら食べないで過ごせませんか。


首尾は上々、と言いたいところですが、鹿を見つけることができずにいます。

色々と探ってはいるのですが、所在が掴めません。

帝都から去ったという情報もありせんが、これだけ所在を掴めないとなると、仕切り直すことも含め考えた方がいいかもしれません。少し妙な感じです。


見つけることができれば、必ず仕留めます。

ただ、もう少し時間をください。

万一帝都不在が発覚した場合、追いますか?



あなたの忠実な梟

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