第12話 ふふっ

 ――ふさ、ふさ、さく、さく。


 そうそう。こうやって、足音が聞こえやすいように、草を並べておいたんだった。


「ふっ」


 自分の笑い声を誤魔化すため、私はわざと、物音を立てる。


 ――ガサガサ。


 いくらなんでも、バレバレすぎるわよ。そんなの、寝たふりだって分からないわけないじゃない。


 ちらっ。と、赤い目が一瞬、きらりと輝いて、思わず、吹き出しそうになる。


 ちらちらっ。


 どれだけ、ちらちら見るのよ。こんなの、サンタさんじゃなくても分かるわよ、バカ。


 真っ白な髪。あたしとおそろいね。当然だけど。


 お姉ちゃんの分を置いて、まなの分も置いてあげて。


 ちらっ、ちらっ。


「ふっ、ふふっ、ふ、ふふ」


 ――こつん。


「悪い子ね」


「ふにゃっ」


 おでこを、ぴんっ、と弾く。こんなの、突っ込まずにはいられないわよ。笑わせないで。

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