第13話 おやすみ

 目を開けようとするまなの上に、手を乗せて、見えないようにする。


「こーら。目は閉じてなさい」


 うーうー唸ってる。私、こんなだったかしら?


「なんで分かったの? あんなにかんぺきな寝たふりだったのに」


「バレバレよ。おめめが、ひくひくしてたわ」


「えー! うそー!」


「ふふっ。ほんと」


 手のひらの下で、まつげがぴくぴく動いて、くすぐったい。


「プレゼント、くれないの?」


「まながいい子で寝てたら、ちゃんと置いていくわよ」


「お姉ちゃんのも?」


 そう。お姉ちゃんはきっともう、ここにはいない。見えるけれど、いないのだ。


「……ええ、もちろん」


「じゃあ、よかった!」


 まながやっと、うとうとし始めた。


「おやすみ、まな」


 もうすぐ眠るはずだから、そしたら、去ろう。


 そう考えていたとき。


「……ねーえ、サンタさん。あたしも、いつか、みんなに、何か、してあげられるかなあ」


 とろんとした声で、まなが言った。そんなことを、聞いたかもしれない。


「――大丈夫。あなたもいつか、きっと、サンタさんになれるから」


 私もやっと、サンタさんになれたから。

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