第10話 最後のプレゼント

 十五になったあたしは、サンタさんに、最後の手紙を書いた。


 ――プレゼントは、今年で最後にしてください。今まで、ありがとうございました。


 去年も悩んだけれど、結局、お姉ちゃんより二つも多く、もらってしまった。


 高校への進学を決意したあたしは――いいえ、私は。大人になろうと決めた。


 いつまでも、こうやって、隠れて暮らしているわけにはいかない。


 それに、夢もできた。


「私は、サンタさんになりたい」


「へー?」


「知識で、子どもたちを助けたい。サンタさんに届けてもらった幸せを、他の誰かに届けたい。――そのためには、もう、独学じゃ、足りない」


 サンタさんからもらった本は、もう全部、理解した。けれど、やっぱり。


「この目で、広い世界を、見てみたい」


 大陸中の景色を見た。美味しいものを食べて。紛争に巻き込まれて。楽しいことも、つらいこともあった。


 けれど。それだけじゃ、足りない。


「――そっか。やっと、わたしが必要なくなったんだね」


「え……?」


 お姉ちゃんは、私が持っていた鉛筆に手を伸ばして――その手が、すり抜けた。


「あのね、まな。わたし、ずっと、嘘をついてた」


「お姉ちゃん?」


「わたしは、もう死んでるんだよ。とっくの昔に。字もろくに読み書きできないまま。死んじゃったの」


「……何を、言ってるのか、分からないわ」


「サンタさんの正体を知ったときにね。なんで、わたしにもプレゼントが届いてたのか、ようやく分かった」


 お姉ちゃんの姿が、少しずつ、薄くなっていく。


「まな。願いは、大切に使うんだよ。もう、わたしがいなくても、大丈夫。ちゃんと、素敵なサンタさんになれるから」


 それ以来。お姉ちゃんの姿は、見えなくなった。

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