第9話 わるーい考え

 売れば家が買えるのだから、サンタさんからのプレゼントも、売ってお金にすればいい、なーんて、わるーい考えがよぎるようになった、十四の頃。


 あたしは、いつの頃からか、お姉ちゃんの背を越してしまって。見下ろすのが当たり前になっていたけれど。それがいつ頃だったか、思い出せなかった。


「サンタさんって、背が高かった?」


「わたしよりはね。でも、まなが思ってるよりは小さいかも」


「そうなの」


 昔見たときは大きく見えたサンタさんも、今は、見下ろすようになっているかもしれない。


「それ、まなが書いた手紙?」


「えっ。ええ、そうだけど……」


 前に散々な言われようだったことを思い出していると、眉間にシワが寄っていることに気がついて、指で、ぐいぐいっと伸ばした。


「へー。字、綺麗になったね」


「……ほんと?」


「うん。わたしがお世辞なんて、死んでも言うわけないじゃん」


「あははっ、確かにっ」


 そう言われた途端、自分の筆跡に、既視感を抱いた。


 自分の字なのだから、見覚えがあって当然なのだけれど――。

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