第5話 願い

 みんなは、願いを魔法に変えることで、日常的に魔法を使っているらしい。


 魔法が使えるみんなのことが、羨ましくもあったけれど。あたしたちは、これまで、魔法を使わずに生きてきた。


 だから、願いを魔法にすることは、やめた。



「願いはね。すごく、大事なものだよ。だから。――死ぬ寸前まで、使っちゃダメだよ」



 やっと十になったばかりのあたしには、きっと、その真意までは分からなかった。


「まなは、夢って、ある?」


「ん? お姉ちゃんと、ずーっと一緒にいること、かしら」


「そっか」


「お姉ちゃんの夢は?」


「わたしは、まなの願いが叶わないこと、かな」


「な、なん、なんで、そんな、いじわる言うのよ……?」


 お姉ちゃんは、ふふっと笑って。


「さあねー」


 と、いつもみたいに、いじわるな顔をして。


 けれど、その中に少しだけ、「寂しさ」みたいなものが含まれているような気がして、あたしは少し、不安だった。

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