第4話 じー。

 私が魔法の存在を知ったのは、サンタさんと出会った次の、九歳の誕生日だった。


 サンタさんの手は、魔法みたいで。あったかくて、安心した。


 そして、魔法みたいに、私が一番欲しいものをくれた。


***


「まほう? 何それ?」


「わたしたちにはね。一人に一つ、願いが与えられてるの。なんでも願いを叶えられる、究極の魔法だよ」


「ほんとにー?」


「まあ、まなが信じられないのも分かるけどね。わたしも、最初は半信半疑だったし」


 お姉ちゃんは、ウソツキだ。だから、あんまり、期待しちゃ、ダメ。


 あたしだって、もう九歳なのよ。さすがに、ちょっとは疑うわ。


「じー。そうやって言うなら、お姉ちゃんが使ってみなさいよ」


「嫌」


「えー!」


「だって、一回しか使えないんだよ? そうやすやすと、まなに見せるためだけに使うわけないじゃん」


「まあ、確かに……」


「それに。サンタさんが魔法も使わずにお仕事できると思う?」


「確かに……!」


***


 魔法を初めて見たのは、土でも石でもなく、初めてベッドで眠った日。


 一人部屋にしたからか、ご飯が一つしか出てこなくて、お姉ちゃんと一緒に食べた。


 私が思うよりずっと、魔法は世界に溢れていて。けれど、私には、魔法が使えなかった。

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