第14話 私の知っている。月夜野家関係者でありません様に!

、先日はお世話――」


 私の弁護士事務所にメイドがあらわれた。


 周辺には他にも雑居ビルが存在しているのだから。


 メイド店員の新人さんが間違って来たとも思った。


 けれども。


 しかしながら。


 見覚えのあるボブカット。


 通称つうしょうボブ子と同じ髪型である。


「ちょっと本人確認の為に撮影するわね。はい、自然体で!」

「えっと、は、はい……どうぞ」


 スマホで撮影する理由は……厳密に言えば、無いけれど。


 絵になるメイド姿が悪いのだ。


 これは、報告案件! ええ!


 素早くスマホを操作して、ある人に送信完了!


「つきまして、本日――」


 用件を言いかけた時に。彼女のスマホから振動音がした。


 これで、ボブ確認、じゃなくて。


 本人確認出来たわね。


「……申し訳ありません、失礼します。もしもし?」


 私に頭を下げ、通話を優先させる。


 落ち着いた仕草しぐさ冷静沈着れいせいちんちゃく


 先日のボブ子は演技だったのかしら?


『あざといボブ野郎です! 自分の需要じゅようを理解して、調子に乗っています! でも、メイド姿は、きゃわわですよ! えへへへ! さきさん、報告、ありがとー!』


 元気良く、一方的に話し、通話を終了。


 声の主は、祀理まつりさんだ。


! お祭り気分の人に密告するなんて! この姿を一番見られたくない人だったのに! 最悪ですよ!」

「仕方無いじゃない? どうにも、私が知っているボブ子さんと違うから。でも、これで確認出来たから。ね?」


 うん、この感じこそ。


 例のボブ子さんで間違いない。





「本名は……本庄ほんじょう 揚羽あげはさん。響愛きょうあい学園の大学4年生」

「驚きました? このボブ子がお嬢様学園に通っていて! ふふん!」


 学生証を堂々と見せつけられた。


 どうやら、私なりの身分証明が気に入らなかったらしい。


 ご立腹である。


「確かに。その学園でトラブルが発生中……いえ、のよね?」

「それは!……はい」


 急に、しおらしくうつむいてしまった。


 私とした事が。もっと配慮はいりょすべきだったわね。


「……今日はその関連で。学園として多華たか先生に相談が」

「学園として?」


 いきなり飛躍ひやくした感じね。


 個人の問題では無く?


「実は、一連の推移すいいを学園の有力一族が問題視して。特別編成チーム? の査察ささつが来るとの事です」

「なるほど。ボブ――揚羽あげはさんとしても、歓迎すべき流れじゃないの?」


 少なくとも何も動かない組織よりは、だけれども。


 そうなると、その査察隊ささつたいが問題なのかしら?


「そうですね。でも、学園としては戦々恐々せんせんきょうきょうで。多額の寄付金をしてる一族ですから」

「……その一族『もっちー! ですわー! もっちり! おーほほほ!』とか連呼している人居ないわよね? 気のせいよね?」


 せめて分家ぶんけであって欲しい。


 私の知っている。


 月夜野つきよの家関係者でありませんように!


「その『もっちり姫』月夜野つきよの さつき様です。査察チームの隊長に就任したのは」

「……勘弁かんべんしてよ」


 今まさに、学園としての立場を理解してしまった。


 良くも悪くも。何をしでかすか分からない人物。


 月夜野つきよの さつきのお目付け役に。


 私を任命するつもりらしい。


 当然よね。


 今までの事情を知っていて。


 揚羽あげはさんともそれなりに親しくなった。


 学園の事だから。私とさつき署長の接点も知っているのかも。


 または、このボブ子さんが。


 私を学園に紹介したのかしら?


『学園の相談役にぴったりな弁護士と知り合いました!』等々。


 どちらにしても。


 接点を持った時点で。似たような流れになったのだろう。


 だからと言って。


 あの姫署長さんをどうにか出来るかは……難しいでしょうね。はあ。



 


 


 


 

 


 


 

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ニート呪詛使いと花園の結界 偽善者!? @suruga281

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