第13話 わたくし、もしや……頼むべき人材を間違えました?

『結界? が強いって? 何?』


 タブレット端末での筆談で。


 わたくしの疑問を玉村たまむらさんが代弁してくれた。


「規則、しきたり、特定のルールが支配している所が結界だよ。まあ、結界自体は珍しくも無いんだよ? 区分くぶんみたいな感じだから」


 法治国家、民主主義等々。


 ルールの数だけ存在するとなると。ありふれた事でしょうね。


「問題なのは、結界の強度。そこに居る人間達がルールを守ろうとする、決意。使命感さ。そんな所に、別の結界から来た人間が立ち入ろうとすると?」

『衝突や争いになる?』


 外部のよそ者と言う事でしょうね。


 排他的はいたてきで保守的な場所。


 言い分も理解出来ますけど。


「ならば! わたくしがルールですわー! 貴方達は、そのもっちり要員! メンバー! 命令に従いなさい! おーほほほ!」

「もっちり要員って何!? ファンクラブなの!? 年会費と特典を教えてよお!? 会員カードの発行されてませんけど!?」


 なるほど。カードも用意しなくては。


 やはり、純金製? プラチナ?


「だから!? 真面目にファンクラブを創設しなくて良いからね!?」

「貴方からの要望を検討していましたのに! 嘘でしたの? ぽこちゃんしますわよ!」


 優柔不断ゆうじゅうふだんで迷惑ですわ!


「ともかく! その学園も閉鎖的で保守的。一般人が行くだけで――

「事の推移を見守るだけですわ!? 傍観ぼうかんでも構いません!? 先っちょだけですの!?」


 このままでは人員が確保出来ません!?


 月夜野つきよの家として面目が立ちませんし!?


「……もっちーには世話になっているし。それなりに感謝してるけど。今は、療養中だからなあ。うーん」


 玉村たまむらさんの顔色を確認しつつ思案中?


 ならば! そちらを説得すれば!


玉村たまむらさん、お加減はいかがです? 何か困った事があれば、伝えてください! さあ! さあ! さひゃあん!?」

魂胆こんたんを少しは隠しなさい! 悪い子には、わき腹を突っつくぞ!」


 人差し指でわき腹を突かれ。あられもない声を!?


 ゆ、ゆゆゆゆ、許しませんわ!


「あひん!? たま姉、そこ弱いから!? あひゃはは!?」


 目の前で二人がじゃれついていますわ。


 サバンナの大自然ですの!? 


 二人だけの空間。


 なるほど、これも一種の結界。


 外側から見れば、異様な光景ですが。


 当人からすれば、日常的光景。


 むしろ、この場の異分子は――わたくし!?


「わたくしだけ……のけ者ですの!? いやんですわ!? 仲間外れ、許すまじ! くっころ!」


 郷にっては郷に従う精神ですの!





「……もうらめぇ。笑い過ぎて、お腹痛い」

「……ふう、ふう。わたくしも、お疲れちゃんですわ」

「…………」


 三人でのくすぐり狂騒きょうそうを終え。


 無駄に体力を消費しましたわ。


 わたくしに対してだけ……ふとももを重点的に狙われたのは。


 気のせいですわね! きっと!


 もっちりしていませんし! 弱点でもありませんもの!


「もちつき大会終了! さっさと帰れ! 家に帰るまでが――もちつきですよ!」

「おーほほほ! 校長先生みたいな事を言いますのね! では、さような――じゃ! あ! り! ま! せ! ん! がるるる! ばうばう!」


 危うく帰宅させられる所でしたわ!


 も、もちつき大会!? だ、誰が、もちもち野郎ですって!? 


 もっちー! もちもち! もももも!


『みか君、あたしは平気! やましいと思っているから、隠ぺいしてる! 学園の腐敗ふはいを明らかにしよう!』

「『やましいと自覚しているから隠す』か。呪いの言葉としては、シンプルで、常に流行してそうだ。やれやれ」

「週刊誌の取材は禁止ですの!? オープンキャンパス気分で見学して下さいませ!?」


 玉村たまむらさんのジャーナリスト魂を刺激してしまいましたわ!?


 わたくし、もしや……頼むべき人材を間違えました?

 







 


 


 


 

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