第9話 うわっ! でた! 変態属性持ち!

「さあ! ボブ子ちゃん! お話どうぞ! 私は邪魔しない様に……ナポリタン食べてるから。気にせずに!」

「私の事よりも『昔ながらのナポリタン』に夢中じゃないですか!?」


 ち、違うもん!?


 弁護士の咲さんに。バトンタッチしただけです!?


 昭和レトロな喫茶店に。テンションが上がって。


 定番のメニューを堪能たんのうなんて。気のせいだもん!?


 私の思惑おもわくとしては。


 ボブ子ちゃんが自然と話せる環境を……整えたのだ!


「あらためまして、弁護士の多華たか さきです。今はプライベートの時間だから。雑談で良いのよね? えっと」

「……ボブ子で構いません。ご配慮に感謝します」


 咲さんがいつの間にか。弁護士バッジを外している。


 あくまで、法律相談では無く。


 知人の世間話と言う形で。彼女に寄り添ったんだ!


 流石、咲さん! 出来る女性です!


「……私は女子大に通っているのですが。友人が何者かに重傷を負わされてしまい」


 うへぇ!? これから、ケチャップまみれになるのに!?


 ドラマで使われる血糊ちのりを。


 それとなく、イメージして。


 た、食べにくいかも!? 


「命を落とさずに済みましたけど。……犯人について、証言をこばんでいて」

「犯人をかばっているのね? その友達、理由を話してくれた?」


 コーヒーカップを優雅ゆうがに口元に運びつつも。


 きちんと相づちをする咲さん。


 私と比較ひかくしても。どうしようも無いけど。


 知的で優秀。


 ちょっぴり、うらやましい。


『性格が破綻はたんしている魔女より。まつりちゃんの方が、ちゅきいなの! 愛してる! むぎゅーさせてよお!』


 うっさい! むぎゅーのサイコパスめ! 


 御門みかど君に性格の事を言われると。


 ブーメランだからね! 


 な、何が『好きなの! 愛してる!』だ!


 ケースワーカーの私から。


 逃げたくせに。


 好意は素直に受け取っておくもん!……ありがと!


 脳内で彼と対話に文句をつけながら。


 豪快ごうかいにスパゲッティを胃袋に流し込む。


 ボブ子ちゃんが私の食べっぷりに。


 目を白黒させたのは。多分、気のせい!


「犯人が事実誤認していた? とか。心身耗弱しんしんこうじゃく?」


 誤認は……間違いだよね。勘違いで傷付けたのかな?


 心身なんたら? 


 確か、精神的な病気とかで。


 正常な判断が出来にくくなってる状態?


「……法律上の減軽事由げんけいじゆうね。大学の責任者に事情は?」

「学園長にも話をしましたが。その……はっきり言うと、名門の学園なので。事を荒立あらだてるのは難しく。経過を注視するとの事です」


 お嬢様の大学? 


 さつきちゃんみたいな人が……たくさん?


 そ、想像出来ませんわ!? 


 おーほほほ!? ど疲れちゃん!?


「うーん。お友達が素直に話してくれたら。それなりに、対応出来ると思うけど」

「……ですよね。本当に、で。普段は、お調子者なのに」


 深くため息をつきながら。


 きっと、そのお友達を。


 思い浮かべているのだろう。


 あきれつつも。


 これまで見た、ボブ子ちゃんの表情とは違って。


 どことなく柔和にゅうわに感じた。


「私の知り合いにも居るよ! ふざけた奴でさ! へらへらしながら『大好き! 愛してる!』とか。恥ずかしいセリフも言ってくるし!」


 御門みかど なにがしを。


 引き合いに愚痴ぐちを言ってしまった。


 どうやら私も。


 色々と誰かに相談したいのかな?


「そ、そうなんですよ! 私が不快でにらむと。『ご褒美ほうびだ!』なんて喜ぶし!」


 予想以上に同意してくれた。


 お互いの苦労話をするのも。


 たまには良いよね?


「うわっ! でた! 変態属性持ち! それも一緒だね!『まつりちゃんにかまってほすぃーの! むぎゅーして!』だよ?」

「そんな事も言います! えっ!? 同類ですか!?」


 同じタイプの人間かな? 


 だとしたら、ボブ子ちゃんの気苦労きぐろうに。


 親近感を抱いちゃうもん!


「なのに! 先月は、勝手に人をかばってさ! 危うく死にかけてるし!」

「えっ!? 過ぎて怖いですよ! 何か――」


 少し苦笑いをしながら。


 ボブ子ちゃんにしては、おどけた感じで。


「同じ様なでも流行してたりして。物騒ぶっそうです」


 と、御門みかど君みたいな言霊ことだまを言い放ったのだ。


 


 


 

 


 




 


 










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