第10話 これでは、女子会と変わらない……です。

「呪いとか不吉な事を言わない! 引き寄せちゃうよ! ボブ子ちゃん!」

「あくまで例えですよ? もしかして、信じてます?」


 食いしん坊のケースワーカーさんに。


 通称ボブ子――私、本庄ほんじょう 揚羽あげはは。


 何故か、厳重注意をされてしまった。


「精神的に悪影響な言葉だもん! 占い結果の悪い時みたいに!」

「意外に現実的な思考で驚愕きょうがくです!?」


 呪いを精神的な暗示としてとらえているなんて。


 てっきり、ホラー映画みたいな想像をしてるタイプだと。


「あっ! その反応! 私が幽霊とかのたたりを信じてると思ったんでしょ!」


 ジト目で私の思考を言い当てた。


 実に、その通りなのだから。


 取りつくろいすら忘れてしまった。


「わ、私はね! ちょろくないもん! ゆ、幽霊とかも怖いけど!?」

「どちらにせよ信じてるじゃないですか!?」


 やっぱり、ちょろい人です。


 ただ、彼女の人柄には。


 不思議と抵抗感が無く受け入れられている。


 私も人見知りするタイプなのに。


 素の自分で接している事実にも。


 驚きです。


「咲さん! このボブ子ちゃん、腹黒で黒あんみつ状態です!」


 すっかり、多華たか先生の存在を忘れて。


 雑談をしてしまった。


 少しですが。ばつが悪いです。


 これも、夏祭りみたいな人のせいです! 


 お祭り騒ぎを体現してると思います! 名前だけに!


「……精神的な呪いのき方とか。あいつ、何か言ってたかしら?」


 多華たか先生!? 話題に食い付きました!?


 しかも、前のめりです!?


「えーと『自分が納得して後悔しなければ。呪いなんかにやられないぜ!』とか?」

「……中二病ね。それが難しいって事も分かってるでしょうに」


 呆れた表情を見せて――どこか、もの悲しげに映りました。


 弁護士として活動していれば。


 精神的にも負担が多いのだろう。


 それこそ、誰かに恨まれたり。


 呪われたり。


「そ、それから『愛しい人と、むぎゅーをすれば解決!』とか!?」

祀理まつりさんをからかう方便ほうべんでしょ? やっぱり、関わりたく無い奴だわ」


 話の流れからさっするに。


 確かに、継子けいこ様と同レベルぐらい。


 ヤバい知り合いですね。


 多華たか先生の何とも表現し難い。


 嫌悪感けんおかんが伝わって来るぐらいなのだから。


「……頭ごなしに否定するのも、問題よね? 確認しましょう! 祀理まつりさん!」

「む、むぎゅーするですか!? わ、分かりました! どすこい!?」


 弁護士としての実証実験!? それにしては……随分と乗り気です!?


 どすこいは相撲すもうだから!? ぶつかり稽古けいこですか!?


 二人は、そう言った関係!?


 ツッコミがチャットみたいにどんどんあふれてるのをよそに。


 喫茶店でバグする姿を見せつけられている。


「えへへへ! 咲さんが、キマシタワー!」

「あらっ~可愛い! アニマルセラピーに近いのかしらね! うふふっ!」

「注目のまとですから!? 営業妨害!?」


 周囲の人に奇異きいな目で見られに違いない。


 お店だって迷惑行為――


「ふう! とうとい! 店員さん! 紅茶のお代わりを!」

百合ゆりの花を眺めつつ。パンケーキをもっと持ってきてぇー! 食欲が増しちゃうの!」


 女性のお客さんから。悲鳴に近いオーダーが。


 しかも、あちこちから。


 おかしなお客ばかりで恐怖です!?


 でも、これなら。


 あのお騒がせ――継子けいこ様と一緒に来店しても問題無さそう。


 機会があれば。一緒に――


「むむっ? 恋する乙女の表情です! 詳しく聞かせてもらいます!」

「そうね。まるで別人。相談者を入念に見極めないと!」

「べ、別に、普通です!」


 この夏祭りの人、喜怒哀楽に敏感びんかんだ。


 ケースワーカーとしてのスキルをここで発揮しないで欲しい。


 もはや、当初の目的を忘れてしまいそう。


 これでは、女子会と変わらない……です。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 



 

 

 


 




 

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