手紙を持った女性。

またまた別の日の夜。


青年が、大きな木の下のベンチに座っていると


そこに、手紙を持った女性がやってきた。


その女性はそわそわしながら、周りを見渡して


「あぁ、緊張する。うまく渡せるかな」と


ぼそぼそ呟いている。


青年は、その女性がなんで緊張しているのか気になって声をかけた。


「どうしたんですか?そんなにそわそわして」


「今から好きな人にこの手紙を渡すんです。それで緊張しちゃって」


「もしかしてラブレター?」


青年がそう言うと、女性の顔が急に赤くなった。


「そ、そうですけど!渡すだけですから!」


そう言って女性は、顔を手で隠した。


「告白しないんですか?」


青年は首を傾げた。


「そんな勇気出ないですよ。私、小さい頃から、いつも大事なところでミスしちゃうんです。だから今日は、手紙で気持ちを伝えようと。本当は直接言いたいんですけどね」


女性は、恥ずかしそうに下を向いて言った。


「じゃあ今日、直接言いましょう。その方がきっと気持ちも伝わりますよ」


青年はガッツポーズをしてそう言った。


「無理ですよそんなの!あの人にだけは嫌われたくないんです!」


そう言って女性は、手をバタバタさせた。


すると


「あの・・・」


藍色のマフラーを巻いた男性が、こちらにやってきた。


「わ!き、き、急に呼び出してごめんなさい!」


女性は慌てながら、あたふたしている。


「手紙!」


青年は小さな声で、緊張している女性に声をかけた。


それに気づいた女性は、持っていた手紙を男性に差し出す。


「これ、よかったら受け取ってください!」


「お手紙!嬉しいな」


男性が手紙を受け取ろうとした瞬間


ぴーぴーと、どこからか小鳥たちがやってきて


その手紙を、空高くに持って行ってしまった。


「私の手紙が・・・」


女性は肩を落として、しょんぼりとしてしまった。


青年はその時、この女性を応援したいと強く思った。


「やっぱり、直接言わないと!」


そう言って青年は、心からこう願った。


(お日さまお願いです。この女性に勇気を・・・)


ここまで願った青年は、ふと思った。


誰かから勇気をもらって、その力で告白しても


それは、二人の幸せのためにならないと。


そして、青年は願うのをやめた。


すると女性は、悲しそうな表情で口を開いた。


「今日はごめんなさい。それじゃ・・・」


パチン!!!


大きな音がどこからか鳴り響いて、女性の声を遮った。


その瞬間。


目の前の大きな木が、色とりどりに光り出して


大きなクリスマスツリーに変身したのだ。


「わぁぁぁ・・・!」


二人は目を輝かせて、その大きな木をしばらく見つめていた。


そして。


「クリスマス、なにか予定ありますか・・・?」


女性は顔を真っ赤にしながら、恥ずかしそうに言った。


「なにもないですけど・・・」


途端に、男性の顔も赤くなる。


「じ、じゃあ、一緒に、過ごしてくれませんか?」


「・・・ぜひ!」


そんな二人の幸せそうな表情を見た青年は


「邪魔しちゃ悪いよね」


そう呟いて、笑顔でその場を去って行った。

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