笑顔いっぱいの少年。

また別の日、青年が街を歩いていると


今度は公園の前に、笑顔いっぱいの少年が立っていた。


その子は小さな両手を大空に広げて、大きな声で叫んだ。


「今日も雪だよ!!やった〜!!」


それを聞いた青年は嬉しくなって少年に近づいた。


「こんにちは。君は雪が好きかい?」


「うん!大好き!だって、いっぱい遊べるから!!」


少年は元気いっぱいに答えた。


青年はますます嬉しくなった。


「それはよかった。ところで君は、雪で何をして遊ぶの?」


「えっと、怪獣とか、お城とか、いろいろ作ってママに見せるんだ!」


「ママはどこにいるの?」


青年は周りを見渡しながら尋ねた。


すると少年は、少し上を見てこう答える。


「ママはね、ずっとずっと遠くにいるんだよ。でもね、いつも僕のことを見てくれてるんだ!だから毎日ね、この公園でママと一緒に遊ぶんだ!」


青年は少し切ない気持ちになった。


そして大きな両手を広げながら、目一杯の笑顔で言った。


「じゃあ今日は、ママと、君と、僕の、3人で遊ぼう!」


「やった〜!!遊ぶ遊ぶ!!」


少年は嬉しそうに、ぴょんぴょんとそこらを跳ね回った。


「じゃあ、まずなにしようか?」


青年が聞くと、すぐに少年は答える。


「ゆきがっせん!!」


そうして、二人はしばらく一緒に遊んだ。


雪合戦して、大きなお城を作って、ママに見せて、また雪合戦して。


少年の身長と同じくらいの怪獣も作った。


いっぱいいっぱい楽しく遊んだ。


「次はなにしてあそぼうか!」


青年は、少年に元気よく聞いた。


「・・・」


しかし、少年は何も答えない。


「どうしたの?そんな悲しい顔して」


青年は尋ねた。


すると少年は、賑やかな声のする方をジッと見つめながら言った。


「僕も、もっとママと一緒にいたかったな」


少年の目線の先には


少年と同じくらいの男の子と、そのお母さんが手を繋いで歩いていた。


きっと、遊んでいた男の子を迎えに来たのだろう。


その親子は、なにして遊んだかや、今日の晩御飯の話を楽しそうにしていた。


「ママ、僕のこと嫌いなのかな」


少年は、今にも泣き出しそうな顔でそう言った。


「そんなことないよ。ママは君のこと大好きさ」


「じゃあなんでお迎え来てくれないの!!」


少年はとうとう泣き出してしまった。


青年にはどうすればいいか分からなかった。


なんと声をかけてあげればいいのか。


どうやったら笑顔になってくれるか。


そんなこと考えて


ただただ、時間だけが過ぎていった。


そして、だんだん周りが暗くなると


少年は泣き止んで、青年にこう聞いた。


「なんでお日さまは沈んじゃうの?」


少年は寒そうに体を振るわせながら、青年の回答を待つ。


青年はそれを見て、少しだけ考えてからこう言った。


「君からこれ以上『幸せ』を奪わないようにさ」


青年がそう言うと、また少年はぽろぽろと涙をこぼした。


「寒いよ。僕は一人だから、ママがいないから、ずっと寒いんだ」


「大丈夫。君が寒くなった時は、僕がずっとそばにいてあげるから」


青年はそう言って、優しく少年を抱きしめた。


そして、心からこう願った。


(お日さまお願いです。どうかこの少年にずっとずっと優しい幸せをあげてください。)


すると二人の頭に、白く光る綿のようなものが落ちてきた。


少年はそれに触ると、すぐに涙を止めて言った。


「わぁ〜!見てみて!あったかい雪だ!!」


「ほんとだ。ぽかぽかするね」


青年はそう言って、にっこりと笑った。


「でも、なんで雪なのにあったかいんだろう?」


少年は首をかしげる。


青年にはすでに、その答えがわかっていた。


そして少年に、こう言った。


「これはきっと、ママからのクリスマスプレゼントさ。先が暗くても怖くないように。心を冷やして風邪をひかないように。ずっとママは見てくれてたんだ」


それを聞いた少年は、すごく嬉しそうにぴょんぴょんと飛び回った。


「やっぱりママは僕のことが大好きなんだね!!やったやった!!」


その雪は、優しく輝いて、まるでお日さまのように暖かった。


まるで夜空に浮かぶあの星たちのように。

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