第9話 西宮 豪①

 俺の名前は西宮 豪(にしみや ごう)。

冴えないサラリーマンの父と専業主婦の母から生まれた。

身分こそ平凡だが、その顔と容姿はモデル級。

父はクソださい不細工だが、母は女優並に美人。

どっちの遺伝子を受け継いでいるかは一目瞭然。

物心ついた時から俺は女に言い寄られていた。

小学生の頃、好奇心からショタ好きの女子大生と関係を持ったことが俺に男としての自信つけさせたきっかけ。

それ以降、俺がちょっと優しく接しただけで、大抵の女はホイホイ寄り付く。

でも、女の味を知った俺がガキのおままごとみたいな恋愛なんぞに満足できる訳がない。

顔と容姿で寄り付く女共をベッドの上で鍛えた体とテクニックで身も心も俺のものにする。

そんな支配感が俺にはたまらなかった。

でも人間には飽きと言うものがある。

どれだけ良い女でも、普通に抱くだけじゃ徐々にマンネリが進む。

そんな俺に転機が訪れたのは俺が中学生の頃......。


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「お前とは離婚する! お前が有責側なんだから慰謝料は払え!」


「はいはい。 言われなくても慰謝料くらい彼が払ってくれるわ。 ほんと、これだから貧乏人は浅ましくて嫌だわ」


「いい加減にしろっ! お前は自分が何をしたのかわかっているのかっ!? 夫と子供がいる身でありながら、不倫をしたんだぞ!!」


「うるさいわね......たかが不倫くらいで。

みっともない男......だから私に愛想尽かされるのよ」


「なっなんだとっ!?」


「顔も容姿も平凡......かといって給料も平凡。

ほんとつまらなすぎて、人生損したわ!」


 ある日、父と母が離婚することになった。

原因は母の不倫。

父は前々から母の不倫を疑い、探偵を使って母の調査を行っていた。

その結果が、テーブルに広がる不倫写真の山。

相手の男は有名IT会社の社長である西岡 拓郎。

若くて容姿も良く、金も有り余るほどある。

正直、母が不倫に走るのは何もおかしくない話だ。


「あと、豪は私が引き取るから。 養育費はよろしくね?」


「なっ!ふざけるなっ! 俺から豪まで奪う気か!?」


「平凡なあんたと金持ちの彼とどっちと暮らすのが幸せか、考えるまでもないでしょ?

私、豪のことは可愛がっているから」


「お前のような不倫女に豪は渡さん!」


「じゃあ豪に聞いてみればいいじゃない。

ねぇ、豪。 どっちと一緒に暮らしたい?」


 母は俺にそう問いかけてきた。

俺は当時14歳で親を選べる年齢だ。

頭がお花畑な人間なら、父を選ぶだろう。

でも俺はそんな連中とは違う。


「俺は母さんと暮らしたい」



 俺は迷うことなく母を選んだ。

母はにっこりと微笑んでいたが、父は化け物でも見たかのように、こわばった顔で腰を抜かしていた。


「豪……お前、本当にいいのか? そいつは俺とお前を裏切って不倫に走った女なんだぞ!?」


「だから? 父さんと一緒に貧乏生活を送れって? 冗談じゃねぇよ……俺はそんなのごめんだね。

俺は楽に生きて行きたいんだ。 っていうか、それくらい察しろよ。 そんなんだから、母さんに不倫されるんだよ」


 俺には母さんの不倫なんてどうでもいい。

今後、楽に生きていられるなら、不倫相手の所に転がり込んだ方がいい。

まともな神経してる人間なら当然の選択だろ?


「ご……豪……お前……」


「アハハハ!! さすが私の子。 よくわかってるじゃない?」


 俺と母さんに捨てられたショックからか、父さんは力なくその場で膝を付いた。

魂の抜けきった顔で、涙まで流している。

マジでみっともないと思った。

こんなゴミの血が俺の中に流れていると思うとヘドが出るぜ。


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 その後、西岡 拓郎は父に慰謝料を払い、無事に母との離婚が成立した。

父は一矢報いたいと思ったのか、裁判を起こそうとしたらしいが、それも西岡拓郎の圧倒的な権力と財力でうやむやにしたので、無意味になったけどな。

それから俺は父とは会っていない……会う理由もないからな。

ただ、西岡拓郎……いや、俺の新しい父はあの底辺男の住むアパートの隣に部屋を借り、そこで母とヤリまくっていたみたいだ。

もちろんその理由は、底辺男の隣でかつての妻を抱くことで、さらなる刺激を感じるためだ。

そのせいか、父は離婚後に精神を病んで引きこもり、酒浸りになった挙句自殺したらしい。

実に底辺らしい、無様な最期だ。

訃報と聞いて俺達は腹を抱えて大笑いしていたな。

でもあいつにも役立つことがあった。

俺はこの件で、女を寝取るというスパイスを知った。


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 高校に入る頃にはマンネリ化していた女との行為も、男から寝取るというスパイスを足したことで、頭が狂ってしまうほどの快楽を得ることができた。

同級生の女子はもちろん、先輩や後輩にも片っ端から手を出した。

新婚したばかりの女教師も軽く摘まんだことがあったな。

学校外でも彼氏持ちや人妻を結構喰ったな……。

何人か妊娠させてヤバくなったこともあったけど、親父の力で簡単に握りつぶせたからノーダメージ。


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 高校2年に上がる頃にはスクールカーストの上位に立っていた。

金持ちで顔をイケてる俺なら当然だけどな。

親父のコネとカーストの権威を持つ俺ならば、努力なんてダサいことしなくても成績なんてどうにでもなる。

学校でどんな問題を起こそうが、親父を敵に回したくない教師共がもみ消してくれる。 

そんな俺にとって学校は女を狩る狩場の1つでしかない。

一部では女を寝取るクズ野郎とか呼ばれているが、そんなものは所詮……権力もなく容姿も醜い下等生物共の嫉妬に過ぎない。

怒りが湧くどころか、心地よく聞こえてくる。

気に入らなければ、人を使って退学や不登校に追い詰めたらいいだけだ。


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 そんな人生楽勝な俺にも悩みがあった。

俺はこの容姿と親父の力でかなりの女を喰ってきた。

その大半が彼氏持ちで、女に裏切られたカス共が泣き崩れて心を壊す姿がたまらなく興奮するし、男として俺が勝っているのだと実感できる。

だがその中には、俺になびかない女もいた。

”彼氏を裏切りたくない”だの”あんたに興味がない”だの、意味不明な理由で俺の誘いを断りやがる。

男がいなくても、貞操観念の固い女はちょっと強引に迫っただけで怒って抵抗してくる。

マジで脳ミソ腐ってんのか?ってくらいムカつく女共だ。


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 高校2年の夏、そんな俺にさらなるチャンスが舞い込んできた。

校舎裏で佐山香帆という女子だ。

香帆はあの有名な女優、佐山琴美の妹。

家での立場はないに等しいらしく、学校でも居場所がない孤独な女だ。

元々なのか環境の影響なのか、姉に負けず劣らずの顔と体だが、暗くてジメジメとした地味女だ。

男と付き合ったことがないクリーンな女であることは出会ったその日でわかった。

まあそんな女を墜とすなんてことは造作もない。

適当に優しくしてやれば、簡単に心と体を開いた。

俺はいつでもヤレる女として香帆を飼うことにした。

だが、この女は他とは違い、俺を本気で愛している。

それも病的なほど……。


「別に豪がほかの女と寝ていても、嫉妬なんてしないよ?

だって所詮それは体だけの関係でしょ?

豪とあたしは体も心も繋がっているんだから!」


 俺がほかの女と寝ることに対して嫉妬や憎悪を感じていない。

だが俺を心から愛している。

まるで信者を洗脳している教祖みたいな気分だぜ。

でも香帆は俺にとってはある意味特別な存在だ。



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「なあ、香帆。 お前に頼みがあるんだ」


「何?」


 ある日の放課後、俺は香帆と保健室で2人生まれたままの姿で致していた。

無論、人払いはしてあるから問題はない。


「俺が女を寝取るのが趣味だって言うのは知ってるよな?」


「知ってるよ?」


「でもさ……俺になびかない女もいるんだ。 俺より彼氏の方が大事なんだと」


「ばっかみたい! 豪みたいなイケメンにせっかく迫られたのに、彼氏を選ぶなんて……もうそんな頭お花畑の連中なんてほっといたら?」


「いや……そんなことは俺のプライドが許さない。 俺はほしいと思った女は必ず手に入れる! だから、香帆に手伝ってほしいんだ」


「どうやって?」


「俺が直接近づいたらあいつらは警戒してしまう。 だが同じ女の香帆なら少しは緩むはずだ。

あとは適当に近づいて薬でも盛ってやれば女なんてどうにでもなる」


「なんか豪にしては古典的な手だね?」


「古典的でもこれが一番女には効くんだ。 まして彼氏持ちなら俺に抱かれた事実を必死に隠すだろうよ」


「ふ~ん......それが豪の頼み?」


「いや、実はもう1つあるんだ」


「何々?」


「香帆も男を寝取ってくれないか?」


 香帆は客観的に見ても良い女の部類に入る。

この俺が徹底的に仕上げてやってから、さらに女が磨かれている。

俺のような経験豊富なその辺の童貞や経験の乏しいモヤシ程度なら、俺が少しフォローを入れればある程度は堕ちる。


「貞操観念が固い女であっても、男に捨てられたらメンタル的に終わりだ。 弱った女を堕とすことほど簡単なことはないぜ」


「そうなんだ……あたし的には豪以外の男と寝るのは抵抗あるな……」


「香帆……これはゲームであって、浮気じゃない。

そんなに深く考えるな。

何より俺が直々に頼んでるんだぜ? 

香帆は聞いてくれないのか?

俺を愛していないのか?」


「ううん! そんなことないよ!? わかった!……あたし、豪の言う通りにする!」


「それでこそ俺の女だ、愛してるぜ? 香帆」


「あたしも……」」


 香帆が断るとは思っていなかった。

愛してるとささやいて抱いてやれば、香帆は俺の命令を何でも聞く。

実際、それから香帆は女連れの男達を次々と寝取っていった。

あいつの容姿と俺が取り寄せた薬を合わせたら、男達はみんな香帆の体に堕ちた。

その日限りの男もいたが、香帆との行為を撮影した動画を女に見せたらそれまでだ。

そして、捨てられた可哀そうな女達を俺が優しく抱いてやる。

女を寝取って用済みになった男の方は香帆が適当に捨てる。

たまにマジで香帆に惚れた野郎もいたが、俺がちょっとつついてやると、すぐにしっぽ巻いて逃げやがる……実に無様だ。

香帆は何人もの男と関係を持ったが、何回か妊娠したことがある。

そのたびに香帆は子供を堕ろしていった。

”豪以外の赤ちゃんはいらない!”だとよ。

費用は俺が出しているとはいえ、平然と子供を堕ろす香帆のメンタルは素直にヤバいな。

恋は盲目とは聞くけど、これは異常だろ?

まあ俺も、何人かの女を妊娠させちまって……そのたびに金に物を言わせて堕ろさせていたがな。

どいつもこいつも罪悪感で泣き喚いていやがった……男の俺にはわからねぇけど、あれがまともな反応なら、香帆はやっぱイカれてるな。

まあ……そのイカれた女のおかげで、俺はさらに楽しませてもらっているんだけどな?


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 高校卒業後、俺は親父の金で借りたマンションで香帆と同棲を始めた。

……とはいっても、同棲は高校時代から始めている。

香帆が”あんな家には帰りたくない”とダダを捏ねてきたからな。

まあ俺も……香帆には働いてもらいたいから、ありがたいけど?

相変わらず俺は女を喰い荒らし、香帆にも男を喰い荒らさせている。


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「佐山 琴美が婚約?」


 同棲を初めて数年後、俺はニュースで佐山琴美の婚約を知った。

琴美は高校時代から喰いたいと思っていた女だ。

それでも手を出さなかったのは、琴美のガードが固いことと男を作らなかったせいで寝取りを味わえなかったため。

婚約者となれば、彼氏彼女よりも強い背徳感を味われるかもしれない。

リスクが怖くて人妻はノータッチだったが、そろそろ味を知りたいぜ。

だが相手は有名女優。

いくら俺でも手を出すどころか、近づくことすら困難だ。

俺1人なら、こんな面倒な女にわざわざ手を出そうとは思わない。

だが俺の手元には、妹の肩書きを持った香帆がいる。

勘当同然とはいえ、家族がお祝いにくれば、門前払いされることはないかもしれない。

そうなれば、中から香帆が手引きできる

まあ、香帆の話を聞く限り、可能性は低い。

これはいわば賭け。

失敗した所でこっちにリスクはない。

そうなったら他の手を考えるとするか。


「香帆……琴美を婚約者から寝取りたい」


 俺はさっそく、香帆を使って行動に出た。


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