My name is ____(your name). I’m sixteen years old.

『人の価値は身分に関係なく平等だ』とはよく言ったもので、それを信じてドアの外に出てみれば、ご近所さんのエルメスと手元の三百均一バッグを同時に目にして現実を突きつけられたような感じがすることも少なくはない。

 お手持ちのカードに一枚たりとも自分で作ったカードがないので、正直何をやっても自分の功績とは言いづらい。この環境で努力をサボるとそれは金銭を溶かしたということで貨幣損傷等取締法で警察に捕まりかねないし、努力して結果を得たところでそれは手持ちの引いたカードが前提にあるので胸を張りにくい。

 そんなことをうだうだ考えていると勉強がまったく手につかないので家を出て川に近くをとぼとぼ歩いてみたはいいものの、何だかずっと気分が悪くて結局こうやって文章を書くに至ってしまう。

 実際毎日しっかり汗水流して働いて店と社会の経済とを回す二十歳と、顔に千円以下の赤い粉を塗りたくって貨幣損傷等取締法スレスレで何にもならない文章を書いて過ごす十六歳の二十四時間に同じ価値があるかと言われればやっぱりそこは無いんじゃないかと思う。

 昔は川辺に来たら一緒に隣にいてくれた鳩はみんなどこかに行っちまったし、小学校の時馬鹿みたいに遊んだ友達たちは今や県内トップの高校で青春を謳歌している。歳が行くにつれて皆真面目な道に戻っていくのにひとりだけずっとバイクを乗り回し続けている人みたいで嫌になる。

 ただ、努力の多寡にも絶対『ガチャ』的要素があるのは確かで、『人並みじゃないなら努力すればいいし努力は誰でもできる』が本当ならもうとっくにみんな努力して人並みになってるはずなのだ。

『理想と現実のギャップは時に人を苦しませます』という二週間くらい前の友達の金言が身に染みてヒリヒリしてきた。

 やっぱり警察に捕まりたくはないので学校の課題に手をつけ始めると、『あなたのキャリアプランを教えてください』なんて書いていやがる。

 ここは無難に、ここは無難に———と見覚えのある誰かが脳内で囁いてくるのに逆らって指を動かそうとするものの、無い勇気を出して壮大なことを言ってみたときの周りの視線は裕に想像がつく。そうしてまた、「先生になろうと思っています」とだけ書いて親のお金で買ったキーボードの電源を切ることになる。






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