手紙———空のウォッカ

先生へ


今日は雨です。

今朝もちょっと沈んでいたので、空のウォッカを飲みました。

先生はからのウォッカをご存知ですか?

ボトルに入った透明の空気を吸うと、すごくいい気分になるんです。

勉強もはかどります。

東京には、駅や建物にウォッカの供給スタンドがあります。

200mlで100円くらいなのですが、最近は物価の上昇で150円くらいして困ります。

先生は今も道の駅で売ってるコーヒーでカフェオレを作って飲んでるのですね。

また東京に来たら、空のウォッカも試してみてください。

ところで、先生はお仕事は上手くいっていますか。

僕は高校、すごく楽しいです。

友達たちも優しくて、苦手な家庭科の裁縫や理科の実験を手伝ってくれます。

僕は英語とか数学とかを教えてあげています。

この前はみんなでパーティを開きました。

友達は5本も空のウォッカ瓶を持ってきてくれて、ずっとそれを飲んでいました。

ジュースとかコーラとか、コーヒーとかもあったけど、あんまり美味しく感じませんでした。

僕は空のウォッカを飲んだときの、ぼやけていく感じの幸福感が心地いいです。

最近は視力が下がってきて眼鏡もかけ始めましたが、眼鏡を取って見えるぼやけた世界の方が好きです。

正確な計算とか、仲間と競うこととかが、なんだか今までよりずっと辛いです。

人混みに紛れて、空のウォッカを飲んで、そのまま眠るかもう死にたいです。


僕は実に幸福になれるのでしょうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る