ピーターパン
しばらく書けずにいた。
最近、というより自らの年齢が四捨五入してハタチに達するようになってから、歳をとることに相当の恐怖を感じるようになった。
私が恐れているものとは何なのだろう。
若さを失うことというわけでも無さそうで、私がもしいつか年齢的若さを失ったとしても、その時まで自分の理想というものを持ってそれを実現しうるなら何ら苦しいことはないと思うのだ。
私は多分、いろんなやりたいことが成すには手遅れになるのが怖いのだ。
数年前までは今すぐ死んでしまいたい、死んで全く構わない、そういう気でいた。
なのに、いろんなことに触れるようになってからは、アレもしたい、コレもしたいという風で、切り捨てるにはどれも素晴らしすぎる。
その全てを解決する一策として私はとある比較的実現しうる夢を掲げた。
だが、それではまだ少し足りない。カレーの福神漬けと同じ要領で、確実に欠けている。
要はそれは、ある人にとってはあってもなくても良いが、特定の人にはどうしてもなくてはならない一つなのだ。
そういう訳で今私は、カレーを作るにあたって、カレー粉もニンジンもお肉もジャガイモも売っている店を見つけた。けど、福神漬けのみ買うアテのない、そういう状況なのだ。
なので私は、どうしても福神漬けを見つけ、幾ら高い値ででも買い取らねばならないという一心で、生にしがみついているのだった。
私がいま、生きている街は、幼い頃の私が思っていたようなほの明るい場所ではなくて、むしろ眩しすぎて何も見えないような羞明の街だ。
いくら自分の部屋では幼い妖精だった日々に籠もって物語を作っていても、一歩家を出ればナケナシの小遣いをはたいてスタバのキャラメルフラペチーノを飲んでインスタのストーリーにアップすることを強いられる。
頭の中を何本もの列車が走っていて苦しかった小学生の私は、中学生でその時刻表を失って呆然と列車の衝突事故を眺め、高校生でついにその民営化を始めた。
こうして人は大人になってくのかもしれないなと思いながら私は、ピーターパンにもなれず幼い妖精を忘れ彼女を死なせてしまうのだろうか。
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