美しい友情の物語。
本作を一言で言い表すには、この言葉がピッタリであると筆者は考えています。
文章、描写、音楽というテーマ。これらの要素もこの作品をより繊細で美しい物語にしているように感じます。
しかし、光あるところに影あるというように、ただ美しいだけの友情の物語ではありません。
数年間の昏睡状態に陥ってしまった親友の蛍琉が抱えていた苦悩、傷。
主人公である夏川は夢治療という最先端技術の装置『ファンタジア』を使い、治療を行うことになります…。
待ち受けるものは?蛍琉を追い詰めた原因は?夏川は彼を救うことが出来るのか?
あまり語るとネタバレになってしまうので、ここで切り上げさせていただきます。
後はこの物語を是非読んでみてください!!!
そんな思いとともに、ピアノの美しい旋律が聞こえてきそうな物語でした。
眠ったまま目覚めない友人を救いたくて、友人の記憶の世界に入って友人を目覚めさせようとするという物語ですが、友人を救おうとしているつもりの「俺」の方も、実は友人に救われているのだというような優しいお話です。
描写が丁寧で美しい表現がよかったです。主人公からの視点だけでなく、それぞれの視点でも書かれていて登場人物の考えを理解しやすくよかった。
特に主人公の心の動きは良く伝わってきて、いつの間にか共感し引き込まれてしまいました。
私は、祖父母との思い出のシーンにとても惹かれました。優しさでキュンとなり、そして切なくなって泣けました。
とても気持ちのこもっている素敵な物語だと思います。
読み終わったとき、優しい気持ちになれるようなお話だと思います。
人間とはなんと繊細なのだろう。この小説はピアノを通して、まさにその旋律のように、友情の繊細さや美しさを描かれているなぁと感じました。
主人公も含め、登場人物たちはいろんなことに悩んだり、間違いを犯してしまったりします。
そしてファンタジアという、一見この小説には似つかわしくないSF要素が、物語をさらに深くし、登場人物たちのその苦悩を紐解いていきます。作者様の心情描写も素敵です。
最終話まで、僕は毎日数話ずつ読ませてもらっていたのですが、その度にピアノが聴きたくなりました(笑)
これは紛れもなくSF小説であり、青春小説であり、音楽小説です。
ぜひ、御一読を。
「優しい物語」。
あらためてレビューを書くにあたって振り返るに、本作から受けた印象・読後感はこの一言に尽きます。
覚めない眠りへ落ちた天才ピアニスト、主人公の夏川にとっては予期せぬ形でひとたび別たれた親友、蛍琉を目覚めさせるべく。
夏川は蛍琉の夢の中へと潜り、彼に覚めない眠りを齎した原因が何であるか、どうすればその眠りを終わらせることができるのか。それを探ってゆきます。
こうミステリめいた仕掛けでもあり、実情としても蛍琉を覚めない眠りに陥らせるほど彼を傷つけた過去の「事件」を解き明かしてゆく工程はミステリ的ではあり、真相を求めて先を読み進める愉しみがありました。
しかし、そのうえで。これは二人の青年の、そして彼らを取り巻く人々の、心の物語であったと感じました。
屈託なく明け透けなようでいて、その実誰より繊細な感性の蛍琉。
普通の日々に己を埋没させながら、心の裡に瑕を抱えた夏川。
描かれるものは、決してものすごく「特別」ではないと思うのです。誰もがしでかすかもしれない失敗、何かの拍子に足下で陥穽となるかもしれない人の心の弱さ。そうしたものが齎すすれ違いと、結果産み落とされてしまう取り返しのつかないもの。
「夢」という形で、それは現実ではないけれど、そんな形で壊れてしまったものを拾い直し、繕い、もう一度繋ぎ直して形にする。
本作はそんな、優しい再生の物語だったのではないかと思います。
繊細に。精緻に。人の弱さや互いのすれ違い、ままならなさややるせなさを描きながら。
かつて蛍琉の身に起こったことを解き明かして、これからの未来を予感させる優しいハッピーエンドへと続いてゆく物語です。
きっと、とても爽やかな、素敵な読後感に包まれることでしょう。
是非、お手に取ってみてください。
私の大好きな「音楽」小説、それも「ピアノ」ですね。私も「ピアノ」をたしなみますし、「ピアノ」を題材とした小説も今書いているくらいでして、すごく参考にさせていただきました。
なんとういか、主人公と友人との関係が本当に「アツイ」というか、尊いんですよね。「SF」要素が確かにあるのですが、根底は「親友」を救いたいという「主人公」の「純粋な気持ち」が中心にあるヒューマンドラマです。
主人公は、とあることをキッカケに「親友」の心の葛藤を知ります。そして、それを知った主人公が取った行動とは?てな感じの物語になるのですが、正直いって、私は読了後、感動して涙を流しました。号泣レベルですw
この小説は、私がカクヨムコン8で出会ったヒューマンドラマとして、間違いなくベスト3に入る名作です。これは、是非、皆さんに読んで欲しい作品です。
この物語は、ピアノを通じて交流を深める二人の青春を描いた物語です。
脆く繊細な青年たちの心の機微が、美しい旋律にのせて、丁寧に描かれています。
ところが、現代ドラマだと思って読み進めていくと、第二章から物語は一気にミステリーとSFの様相に。
精神的に大きな傷を負って目覚めなくなってしまった親友を、主人公は「ファンタジア」というシステムによって治療しようと試みます。
ファンタジアによって親友の記憶を辿った主人公が見たのは、目覚めなくなった親友の抱えていた葛藤と、「きっかけ」となった事件。
果たして主人公は、親友を救うことが出来るのか?
切なく、どこか懐かしい、美しい物語です。
ぜひご一読を。
この物語に色気はないですが、美しい友情があります。
失って初めて気付くものの大切さをこの物語は表現しています。
敢えて厳しいことを言わせて頂ければ幾分かの論理的なズレは存在します。
しかし、それ以上に人間讃歌としてこの物語は際立ったものがあります。
素晴らしい、の一言です。
今流行りの異世界や悪役令嬢は一切出てこない純文学です。しかも恋愛ものですらないです。逆にそれが良い味を醸し出した秀作と言えます。
この文学では椎名麟三先生の文学を想わせる設定があります。
一見変わり者の音楽家が何故親友だけを渾名を付けずに呼ぶのか?
そこに安心感があるからだと察します。
しかし、信頼していてもすれ違う想い。
そこで大切なものが何かと問いかけ、答える文学なのです。
文章量も良く調節されていて読みやすいです。
自分はこの世界観が気に入ったので、二日かけて読み終えました。
あまりネタバレすると良くないので、この辺りで。
最後まで読んで良かったです。
皆様、是非ともご一読宜しくお願い致します。
幾らかの疑問点は浮かぶでしょうが、それ以上に身に染みる物語です。
美しい青春群像劇かと思いきや、濃厚なミステリー、近未来SFとしても楽しめる作品です。
鍵になるのは《ファンタジア》という、昏睡状態にある者の記憶に入り込める機械。友人が昏睡状態に陥った原因を探るため《ファンタジア》で記憶を調べるうち、徐々に謎が明らかとなる───
場面転換もわかりやすく、単調にならないよう丁寧に物語が組み立てられています。《ファンタジア》の概念も非常にわかりやすく、難なく世界観に入り込むことができます。
美しいピアノの旋律が聞こえてくるような、学生編の描写も秀逸。なんてことない日常の風景も、会話も、登場人物の心情が丁寧に描かれているおかげで読者はどんどんお話の中に惹き込まれていきます。
タイトルの優しい嘘、が何なのか気になるところ。楽しみながら最後まで読ませて頂きます。
近未来SFの世界観を持ちつつ、大学生たちが織り成す美しい青春ドラマでもある本作。
冒頭の蒼馬くんと蛍琉くんの出会いのシーンがすごく詩的で運命的で、まるで映画を見ているかのような美しさでした。読んでいて、すごく心地よい文章です。
楽譜、ピアノ、二人を繋げているのが「音楽」というのもすごく素敵ですし、何気ない日常の風景も爽やかさの中に透明感があって綺麗だなと思うのは、作者様の文章力がなせる業だと思います。
そして、登場人物の名前がキャラクターとぴったりですごくイメージがしやすいです。
この後、お話がどう展開していくのか気になります。
心地よい文章を楽しませていただきつつ、二人の行方を見守りたいと思います。
優れた音楽の才能と、まるで子どものような天真爛漫さを併せ持った青年、雪加蛍琉。彼と、彼の音楽と共に穏やかに過ぎようとしていた高校生活は、彼の転校によって突然終わりを告げる。
それから数年後、ふたりは運命的な再会を果たす。
しかし、その先に待っていたのは・・・・。
ふたりの物語は、読んでいてとてももどかしかったり、微笑ましかったり、切なかったり、様々な感情が次々にやってくるので、目まぐるしくもあります。
ファンタジアという近未来的な装置を頼りに、蒼馬はあの日の蛍琉の記憶を辿る。
夢から覚めない大切な友を救い出せるのか。
それとも、残酷な真実に打ちのめされるのか。
結末がどんなものであっても、とても気になる作品です。
タイトルがとても素敵で、惹かれました。読んでみたらますます好きになり、更新のお知らせが楽しみです。
近未来的でありながらも、しっかりとした青春ドラマ。まるでピアノの音が聞こえてきそうな情景や表現が素晴らしく、作者様は音楽の知識が豊富なのかなと思いました(違ったらすみません)。それくらい繊細です。
ジャンル関係なく、色んな方に読んでいただきたい作品です!