ブラックホースメン


燃えた、と言う感覚。

実際に燃えたワケじゃない。

だが、俺の体の内側から燃え盛る様な感覚が激しく、その証拠に俺の肉体からは蒸気が漏れだした。


「が、ぁッ」


俺はワケも分からず周囲を見回す。

一体何処から攻撃されているのか全然分からない。


「緊急。ヒラサカ、四騎士の一人が迫ってきている、そちらは危険」


ワイズマンは俺から離れている。

俺がこんなに苦しんでいるが、ワイズマンはそんな様子は見せなかった、俺も地面を蹴って、ワイズマンの居る方へ向かうと、体を蝕む痛みは消え去った。


「はッ…はあッ…クソ、なんだってんだッ!!」


俺は黒刀を握り締めたまま周囲を見回す。

近くに居たゾンビたちは、段々と体から蒸気を漏らし出して、そして干乾びていた。


「なんだよ、この能力はよ」


俺がそう言うと共に、ワイズマンを抱き抱える。

此処は一旦、逃げた方が良いと言う俺の判断だ。

ワイズマンは俺の行動に、特に何も言う事は無く、されるがままに動き出す。


そうして俺がビルの隙間へと入っていき、そのまま真っすぐ走っていく。

時折振り向きながら確認をすると、俺が通って来た場所から、人の姿を確認する事が出来た。


人、いや、それは人間の姿をしている、と言うだけだ。

白い包帯を全身に巻き付けた、人型の化物。

包帯の隙間から見える、浅黒い肌が特徴的だった。

ワイズマンがその化物の姿を認識した時、声を漏らした。


「認識。あれはブラックホースメン」


ブラックホースメン…名前か。

黙示録の四騎士とか何たらとか言われても、正直俺にはピンと来ない。

確かあれか?上を司る?んだっけ?


「ブラックホースメンは飢え、飢餓を司る者」


「おい、アイツの能力はなんだ?」


ワイズマンの口ぶりからして、大体は理解出来ているんだろう。

能力さえわかれば、こっちだって勝てる可能性は出てくる。


「解析。能力名『最終砂漠晩餐ラストデザート』、周囲に散布されているナノマシンを信号命令によって性質をマグネトロン化、空間範囲内のナノマシンに向けてマイクロウェーブを発生し、空間内に居る水分を振動させ加熱させる」


おい、専門用語が多すぎる、どんな能力なんだよ。


「簡単に言えば、ブラックホースメンは空間を電子レンジの様に使う事が出来る」


最初から分かりやすく言え。

でも、そうか。

電子レンジ。

あいつのすぐ近くに居たゾンビが蒸発してたのも、体内にある水分が蒸発した為か。


水分を奪い、対象を木乃伊みたいにさせちまう。

成程、そりゃあ『飢餓』に該当する能力かもな。










  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る