ハッキング

倒れる柊の方を見た。

俺に巻き付いていた柊の鎖が解けていく。

トドメを刺すかどうか、俺は迷ったが。


「…けッ」


少なくとも情と言うものが残っていた。

もしもこのまま、柊を殺していたら俺は後悔していただろう。

そう思えるほどに、彼女と共に過ごした時間が俺を弱らせていた。


「質問。ヒラサカ、終わったか?」


ワイズマンの言葉に俺は頷いた。


「あぁ、終わった、さっさと、俺をプラネットに案内してくれ」


俺が、倒れている柊を一瞥すると共に、歩き出すワイズマンと共に俺も歩き出した。


「このまま、何処に行くんだ?」


俺がワイズマンに聞くと、ワイズマンの目がチカチカと光り出した。

それはまるで、夜中に出会う猫の様に、てらてらとした光が反射をしているかの様に、あるいは、パソコンから放たれる眩い光で目が眩む様に、ワイズマンの目から光が放たれる。


「何をしてんだよ?」


俺がそう聞くと、ワイズマンは黒色のプラネットの方を見上げながら答える。


「回答。ハッキングを行っている」


ワイズマンはごく当たり前の様に言った。

そして、言葉はそれで終わりではなく、ワイズマンは続けて言う。


「私たちは、基本的に適合者の為に存在している。ある程度の願いを叶える事が出来る様にと、そういった機能が宿っている」


「ハッキングか…」


それって、機械内部に侵入して、色々と弄り回す事だよな?


「ついでに言えば、このハッキング能力には制限が掛けられている、出来る、出来ない事は、言えば答えるが、言わなければ私たちは答えない」


と、そうワイズマンがはっきりと言った。


「じゃあ、ナノマシンにハッキング出来るのか?」


周囲に存在するものや、俺の様な肉体にも、ハッキングが可能なのだろうか?


「回答。出来るものと出来ないものがある。基本的に、適合者の肉体は直接接触しなければハッキング出来ない、スキル譲渡はハッキング能力を応用している、しかし、成長の妨げとなる行為だけはしてはならないので、該当する行為は出来ない」


ふぅん。

じゃあつまり、戦闘には使えない。

いやそもそも、戦闘に参加しないのか、ワイズマンは。

折角、色々と戦闘方法を考えていたのだが、意味が無かったな。

と、俺がそう思っていた時、プラネットの表面が開き出した。


「これで、私たちもプラネットに侵入可能、準備は良いか?ヒラサカ」


そう言われて、俺は迷う事無く頷いた。


「当り前だ、行くぞ」


その言葉と共に、青白い光が俺たちを包み込むと、そのまま、プラネットの中へと入っていった。















「ふ、ふふ」

「私が邪魔、だったらなんで殺さないの?」

「じゃあもうそういう事でしょう?」

「比良坂くん、貴方は私に追いかけて欲しいと、そう言ってる」

「じゃあそうしましょう、比良坂くん」

「今度は私が貴方を裂いてあげる」

「そうしたら、今度は私が、貴方に尽くしてあげるから」

「だからそれまでは、お別れね」

「ふふ…ふふっあははッ!」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る