訪れる巨星
「さて…手始めに手ごろな敵でも…」
俺が周囲を見回した。
こっちへと近づいて来る柊以外は何もない。
そう、地平線の遥か先まで、その様な生物は見かけられなかった。
…上空を除いては。
「…あ?」
雲が陰る、俺は上を見る。
其処には…黒いものがあった。
宇宙からしてみればそれは矮小な、星にも満たない塵に過ぎない。
しかし、地球に住む矮小な人間からすれば、それは一つの惑星であった。
黒色の惑星、その表面には青白い光を発光させる線が刻まれており、時折聞こえてくる深淵の底から発する怪物の如き声色は、その惑星の鼓動や呼吸と言った音である。
間近で見てもそれは巨大な地球儀としか言いようが無い存在だった。
「おい、あれッ」
俺が身を伏せようとした。
この街を滅ぼした一撃の光を放つ、正体不明の飛行物体。
これが存在する限り、恐怖しか感じ得ない代物だ。
「回答。あれは、『
言わずとも分かってる。
それはさっき、俺が思っていた事だ。
「疑問。何故ヒラサカはアレに怯えている?」
アレに怯えている?
当たり前だろうが、あれは俺を、この街を、千幸を吹き飛ばしたんだぞ。
「ビームを撃って来る様なクソ機械じゃねぇか、あれは」
「否認。プラネットが放射するエネルギーは生物と無生物を分ける選別の粒子」
選別?
生物と無生物って、生きているものと、そもそも、生物じゃないものの二つに分けるって事か?
「プラネットはウィンが設計したものの一つ。別名、『グレードアップ・ダンジョン』生物はプラネットの中へ内包された末、
…ちょっと待て。
いや、自己解決した。
俺がそのプラネットに入れなかったのは、あの時、俺がレベル30以上だったからだ。
そう確信して、ワイズマンに聞く。
「レベル30以上の適正者の場合は、どうなるんだ?」
「回答。そもそも選別されない。無生物と共に何処かへと弾き飛ばされる。また、無生物は粒子によって分解され風圧と共に吹き飛ばされる、その際に熱量も発するが、レベル30以上ならば掠り傷程度のもの」
…俺が柊を掴んでいたから、その熱量を浴びてしまったのか?
だとしたら悪い事をしたな、最初から、そのプラネットって奴がそういう仕組みなら、そう言ってくれれば良いのによ。
…あ?いや、待てよ。
じゃあ、その話が、本当なら。
「…じゃあ、あのプラネットによって吹き飛ばされたもんは…あのプラネットの中に生きている、って事になるのか?」
「回答。プラネット内部で、生存出来ていれば」
…そうか。
そうか、じゃあ。
その理屈ならよ、千幸は…あの、プラネットの中で、生きてるって事、だよな?
だったら。
「おい、ワイズマン」
俺は、立ち上がり、プラネットに中指を立てて言う。
「俺を、あの中へと連れていけ」
その言葉に、ワイズマンは頷いた。
「承諾。私も逃げる場所を探していた」
そうして、俺たちは利害の一致をしたのだが。
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