開会式の校長の話は長い

「ねえねえ、ゆず君! 今日はお弁当、作ってきたからね! いつもみたいにお弁当、作ってきているからね!」


「お、ありがと七瀬ちゃん! 毎年ありがとね、七瀬ちゃん家のお重箱弁当、すっごく美味しくて大好きだよ! おばさんにありがとう、ちゃんと言わないとな。毎年美味しいお弁当ありがとうございます、って言わないとな」

 俺の家、姉ちゃんが大学卒業したくらいから両親が青春アミーゴしてどっか遠い国に行っちゃったから。


 そのおかげで、毎年毎年こう言うイベントごとのお弁当は七瀬ちゃんの家と合同で食べている……そしてこのお弁当がすっごく美味しいんだよね! 

 七瀬ちゃんもだけど、当然七瀬ちゃんのお母さんはスーパー料理上手、本当にほっぺが落ちそうなくらい美味しくて大好きなんだよね、あのお弁当! もちろん、弾に作ってくれるご飯とかも!


「えへへ、大好きだなんてそんな……こ、こほん! ありがとうは、お母さん以外にも私に言うべきです! 今年のありがとうは七瀬ちゃんに言うべきですぞ!」

 そう言ってででーん、と体型に似合わない大きな胸を張る七瀬ちゃん。


「何々、どう言う事?」


「えへへ、それは今年は七瀬ちゃんもお弁当作りを手伝ったのです! ゆず君に美味しいお弁当食べてもらいたくて、私の愛妻弁……うぐぐ! と、とにかく! 私もお弁当作り手伝ったのです! だから私にもありがとうください!」


「え、マジで? 七瀬ちゃんも作ってくれたの? ありがと、七瀬ちゃん! 七瀬ちゃんの料理もすっごく美味しいから嬉しいよ!」

 この前のご褒美もすっごく美味しかったし!

 これはこれは今日のお弁当が俄然楽しみになってきましたな!!!


「えへへ、ゆず君が私に……にへへ……こほん。じゃ、じゃあまたお弁当の時間に! バイバイ、ゆず君! 体育祭がんばろうね!!!」


「うん、頑張ろうね! お弁当楽しみにしてるね!」


「えへへ、楽しみにしててね! 私のお弁当、ゆず君に……えへへ、待ってるね、ゆず君!」

 そう手を振りながらタッタカ自分のテントに戻っていく七瀬ちゃんに手を振る。

 七瀬ちゃんのお弁当、久しぶり……これはお昼が楽しみですね!



「む~、柚希……む~」



 ☆

「え~、今日は晴天で、お日柄も良く……だからすごく体育祭日和で、温かくて最高なので皆さん頑張れ……あと、スポーツマンシップにのっとって、クラスで協力して、学年対抗で……」

 まだ熱い太陽の下に体操服で整列する俺たちに、校長先生の長ったらしいありがたいお言葉が突き刺さる。


「あの、私事ですが、昨日事故にあいまして、腰骨がダークエンジェルで……でも、皆さんには怪我に気をつけて、それで……」

 それにしてもなんで校長先生の話ってのはこうも長いんだろうか?


 普段の学校集会ならともかく、体育祭の中心は俺たち―俺たちが行う競技なんだから校長先生は自重するべきだと思うんですけど。

 こういう行事の時くらいは校長先生は自重して、すぐにお話を終わらせるべきだと思うんですけど……熱いし。動いてないのに熱いよ~、だし。


「あっ……アハハ、すごいや」

 熱いし話は長いしで暇だったので、チラッと列の前の方を見ると美s……っと今は委員長かが、涼しそうな顔で立っている。

 この日照りの中で列の先頭でいつもの長ジャージに身を包みながら汗一つかかず表情も変えず、真面目な顔に不動の体勢で校長先生の話を聞いている。


「んっ……んんっ」

 俺と二人で居る時のはっちゃけた感じじゃなくて、ダボッとおさげ眼鏡の真面目委員長が最前列で話を聞いている姿は校長先生にとって心強いだろう。


「ふふふっ、今日はなんだかお日柄も良いですし気分も良いですね。皆さんが真面目に聞いてくれて校長先生嬉しいです、校長先生絶好調かつハッピーです」

 こんな真面目に聞いてくれてる感じの生徒が居たら、確かに校長先生も乗り気にノリノリになってしょうもないオヤジギャグも言いたくなるものだろう。

 近寄った時の委員長は少し威圧感があって話しにくいけど、でも遠目から見る分にはすっごく真面目な生徒、話しやすいったらありゃしない。


「だからもうちょっと話しますね! いや~、今日は体育祭で、それで個人的にも……」

 だからって、話を伸ばすのはやめて欲しいけれど!

 美鈴委員長だってあんな真面目な顔してるけど、どうせ中身は早く終わらないかな、なんて考えてるんだろうし! 美鈴、意外と中身は不真面目系だし! 


 ほら、今だって美鈴の顔が一瞬のぞいてたし。美鈴の可愛くて愛おしい顔が一瞬見えて、それで……ダメ、我慢我慢! ダメダメ、今美鈴の事考えちゃダメ! 美鈴……じゃなくて委員長の事大好きとか可愛いとか思っちゃダメな時間!

 一瞬顔にやけちゃったし、美鈴の事色々考えちゃったけどそう言うのはダメな時間!


 ここは学校だから、今は委員長と手塚君だから……今日は土曜日だとは言っても体育祭、学校にいる日だから。

 だからダメ、今日はそう言うのじゃない……今日は美鈴の事、我慢する日! 美鈴の事、考えちゃダメな日、体育祭に集中する日!


「それで私は……だから校長先生絶好調なわけで……」

 とはいっても校長先生の話はいらない! 早く終わってくれ、こんな長い話いらない、もうしんどいよ、かなり!

 体育祭の主役は俺たち、校長先生は全然関係ないでしょうが!!!



 ~~~


「んっ、んんっ……ん~」

 ―校長先生話長すぎ、真面目な顔して聞くの結構限界。長袖ジャージも結構熱いし……まぁ、学校では美鈴出せないからしょうがないんだけど。


「ハァ、んっ……んんっ。んんっ?」

 ―あれ、なんか視線感じるな? 私の事、すっごく見てくれてる視線、感じちゃうな。一番前だからそれで退屈で私を……いや、違う。この色、この感じ……


「ふふふっ、ふふっ……んふふふっ」

 ―柚希だ、この感じは柚希だ。私の事いっぱい見てくれて、それで……えへへ、これは柚希だ。このすごく嬉しい視線は、柚希の視線だ。やばい顔が柔らかくなって、熱くなって……えへへ、やばっ。


 ―柚希が私の事見てくれている表情考えると、柚希の息遣いとか声とか考えると……えへへ、顔にやけちゃうな。にやけて、ふわふわで、それで……んんっ!


「んっ、んんっ! んんんっ!」

 ―本当は今すぐ振り向きたいけど。今すぐ振り向いて、柚希がどんな表情してて、どんな感じで……そう言うのいっぱい感じて、手とか振って柚希でいっぱいにしたいけど。にやけて幸せな表情、柚希に見てもらいたいけど。


 ―でも、ダメだから。今は土曜日だけど学校、私と柚希は今は「委員長」と「手塚君」だから……だからダメ、そう言うのはダメ! 表情も引き締めないと、学校だし、こんなゆるゆるな表情ダメ……私は委員長! 委員長だから今日は我慢しないといけない日なんだ! 今日は体育祭に集中集中!!!


「お、笑ってくれました! それじゃあ、さらに話の続きを……」

 ―でも校長先生は早く話終わらせて、もう熱くて立ってるのしんどいから! 校長先生のための笑顔じゃないんだからね、これは! 柚希への笑顔、大好きな柚希へ捧げる笑顔なんだから!!!



 ★★★

 1作品完結させてからモチベが終わってるので、リハビリ的な話です。短いです。

 あとスマホ変えてブルアカ始めました。モモイとシロコとホシノとヒビキとチナツと……全員可愛くて好きです、流石透き通ってる。


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ナンパされているキレイなお姉さんを助けたら、クラスの地味な委員長だった~俺にだけ本当の自分を見せてくれるようになったけど、えっち過ぎて困ってます!~ 鈴音凜 @akibasuzune624

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