第4話

私の夫はトラックドライバーとして長距離運転の仕事をしています。

会社によって違いがあるかもしれませんが、うちの夫の場合、週の始めの日曜か月曜に出勤して、帰宅するのは金曜か土曜の夜になります。

これは彼女がうちに来る前からで、我が家は基本的に、平日は私と彼女の二人だけの生活でした。


そんな、週の半分も家にいない夫でしたが、彼女は『パパ大好きっ子』に育ちました。

ドッグランで遊んでいる時に、私が他のわんこと触れあってもチラッと見るだけなのに、夫がそうすると必ず夫の側に戻り、よそのわんこに牽制していました。

それを見て、「あたしのパパですけど?」って言ってるよね、と笑ったものです。


もちろん夫も、そんな彼女を溺愛と言ってもいいくらい可愛がっていました。


そんな二人だから。


動物病院で治療の話をしながら私は、とにかく彼女を夫に会わせたい、会わせなければ、と、ずっと思っていたのです。



そして、この日の夜が冒頭のシーンです。


私は彼女に言いました。



パパは土曜日に帰ってくるからね。

パパに会おうね。



繰り返し言いました。

この日から、何度も何度も。

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