第13話 家を増築します

 翌日からリンドの日常が戻ってきた。午前中は体力を鍛えてからミーと一緒に森の奥に出向いてはランクAの魔獣を討伐し、午後は杖を作ったり作物を育てたりと理想のマイペースの生活をするリンド。


 数日経った日の夜、昼間はどこかに行っていたミーが家に戻ってくるとそのタイミングでリンドが言った。


「家を増築しようと思うんだけどいいかな?」


「彼らが来た時のために?」


「そう、倉庫に寝てもらうのも悪いしさ、女性用と男性用で2部屋増築しようかと考えているんだ」


「いいんじゃない?今のリンドなら魔法を使えば増築は難しくないでしょうし」


 家主(?)のミーの許可が出たので次の日の午後からリンドは家の増築を始めた。森の中で倒れている木を集めては持って帰り、それを風魔法で削って板や材を作っていく。


 太くて真っ直ぐな倒木はそのまま柱として使用して今の家の横の空いている場所に4箇所柱を埋めて立てると、床から作りはじめていく。風魔法で慎重に材や板を削ってそれを隙間なく並べて床を作り、壁を作り、そして間仕切りを作る。


 高い部分になると風魔法で板を軽くして持ち上げたり木を浮かせて屋根の骨組みの上に並べてから屋根に上がり木のハンマーで隙間がない様に板と板とを合わせて叩いて仕上げていった。


 あんなにあっさり風魔法で浮かせたりしているけど。あれって結構難しい技術なのよ、うん、完璧にマスターしてるわねとミーは増築をしているリンドを見ながら満足げに頷いていた。


 増築を始めて2週間後に最後の屋根を作り終えたリンド。そして完成した部分は平家で2部屋になっていてそれぞれの部屋に窓を付け、増築部分からリンドのいる母家には雨でも濡れない様にと屋根付きの通路を作った。


 その後は倒した今まで倒していた魔獣の毛皮やミディーノの街で買ってきた絨毯を床に敷いてから一人用のベッドをそれぞれ3つずつ作って部屋に置く。増築作業を開始して4週間後、新しい増築部分が全て完成した。


「これでOKだ」


 外から増築部分を見てから中に入る。一緒に中に入ってきたミーは部屋の中を見て、


「いい出来ね。悪くない悪くない」


 ベッドも机もリンドがここの森にある材料を使って作ったものだ。


「いつ来るかわからないけどさ。作っておいて困ることはないからな」


 そうして一人で夕食を食べているとケット・シーの姿のままのミーが。


「明日から私、ちょっと森の奥に行ってくるから。しばらく帰らないと思うけど気にしないでね」


「わかった」


 ミーが消えるのに慣れていたリンド。今までも昼間いないことが多かったので全く心配していない。妖精は滅多な事ではやられないだろうと。


 翌朝ミーが森の奥に姿を消すとリンドはいつもの様に午前中は鍛錬をする。最近は森の奥のランクAの魔獣が鍛錬の対象だ。気配感知も少しずつだが性能が上がってきており、遠くの魔獣の気配がわかる様になっていた。慎重に1体ずつ倒していたが、時にリンクして2体になることもある。魔法を連続して発動して問題なく2体の魔獣を倒して魔石を取り出しながら自分がまた少し強くなっているのを実感するリンドだった。


 そうして森の奥での鍛錬を終えると、午後は杖を作り、作物を育てて過ごす。


「この杖の製作が魔力をコントロールする鍛錬に最適だな」


 金策ではなくあくまで自分の鍛錬の為に1本1本丁寧に魔力を注ぎ込んで杖を作っていき、ある程度の数を作ると倉庫にしまって、今後は畑を見て回る。出来ている野菜や果実を採り、新しい種を植えたり畑を耕したりして1日が終わる。


 家の裏に引き込んでいる川の水で身体を洗い、畑で取れた野菜と保管している肉を焼いての夕食。これももう慣れたものだ。


 本当の一人暮らしをして4日目の夕方、リンドが庭で果実を採っているとケット・シーのミーが帰ってきた。


「ただいま」 「おかえり」


 そんなやりとりだけでいつもの日常に戻る一人と一匹。


 リンドの夕食の際に黒猫になっているミーが食事が乗っているテーブルの上にジャンプして飛び乗ると顔をリンドに向けて


「リンドって本当にマイペースね。どこ行ってきたのか聞かないのね」


「言いたくないこともあるかもしれない。聞いたことによって嫌なことを思い出すかもしれない。そう思うと聞けないよ。言う時は相手が言うだろうと思ってるしね」


「ぶれないわね」


 そう言うと自ら話しだした。どうやら森の奥にいる仲間のところに行っていたらしい。ミーの話しを聞き終えたリンド。


「ケット・シーって集団で行動したりしないの?」


「妖精も色々いてね。もちろん集団で行動している妖精達もいるわよ。でも私たちはほら、猫でしょ?基本は一人なのよ、マイペース。リンドと一緒ね。でも時々友達に会いたくなる時があってそんな時は友達に会いにいくの。そしていっぱい話をしたらまた一人でマイペースで暮らすの」


「聞いてると俺とおんなじじゃないの」


「そうね、だからリンドとは気が合うのよ」



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お知らせ


12/30から1/3までは更新おやすみします。

年明け1/4より再び更新します。

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