第3話 私の妹、シスコンみたいです

夜ご飯を済ませ、それからのお風呂と歯磨きはあっという間に終わった。

「もう9時30分だし、そろそろ寝る?」

「うん。じゃあ、寝るときにちょっとワガママ言ってもいいかな?」

「いいよ」

「だ、だったら、お姉さまに抱き着いて寝てもいいかな?」

「そんなことでいいの?」

「そんなこと、って、ダメだった?」

「そうじゃなくて、それくらいのことだったらお安い御用、ってことだよ」

「いいの!?ありがとう!」

「そういえば、輪廻ちゃん少し大きくなってない?」

「えへへ、そうかな…?」

「そろそろ電気消すけどいい?」

「うん」

「ふふ、お姉さまあったかい」

「ねぇ、もう12月も半ばなのにそんなワンピースだけで寒くないの?」

「寒くない、のかな?でも、お姉さまがあったかいことは本当だよ」

「ありがとう。あと、明日は私の彼氏が来るけど、あんまり怒らせるようなことはしちゃダメだよ」

「彼氏って何?」

「彼氏っていうのはお婿さんの候補で、私を愛してくれる人のことだよ」

「輪廻、お姉さまのこと好きだから輪廻も彼氏?」

「うーん、輪廻ちゃんはやっぱり妹かな」

「むぅ…」

自分が彼氏じゃないことを知ってふくれっつらになる輪廻ちゃんが妹らしくて逆にこっちが抱きしめたくなっちゃった…。

「お、お姉さま、急にどうしたの?」

「いや、やっぱり輪廻ちゃんみたいな妹ができてよかったな、って思っただけだよ」

「そっか。おやすみ」

「うん、お休み」


深夜2時、トイレに行きたくなって私は起てしまった。そもそもこのアパートには1部屋1部屋に謎のお札が貼ってあったり、妖怪が出るなんて噂もあるほどだったから絶対深夜には起きたくなかったんだけど…。

すると、私は途轍もない恐怖と憎悪に襲われた。寒気がして震えが止まらない。恐る恐る目を開けると、私は一瞬で状況を把握した。私より背の高い顔の見えない何かに抱かれていた。思わず突き飛ばすと、その謎の化け物は寝言のように言った。


「お姉さま…」


まさかこれが輪廻ちゃんで、寝る前に身長が伸びてた気がしたのは勘違いじゃなくて夜になるにつれて進化?していたから!?


「お、起きて!」

「…んー、なぁに、お姉さま」

「今自分がどういう状況か分かる?」

「…え?何コレ!?どういうこと、お姉さま?」

「私もよくわかんない。とりあえず、明日、もとい今日だけど煉砥れんとが来るかたその時に相談してみよう」



そのまま朝が来て、気づくと輪廻ちゃんはもとの姿に戻っていた。


「その、お姉さまの彼氏さまっていつ来るの?」

「もうすぐ来るはずなんだけど…」


ピンポーン


「なぁ、今日俺バイトも授業もねぇから8時まで寝るつもりだったんだぞ」

「そもそも昨日煉砥に連絡つかなかったのが悪いんじゃん…」

「そ、そりゃそうだけど…。で、その貞子とやらは?」


「は、初めまして、輪廻です。急にお姉さまの妹になりましたが、よろしくお願いします」

「…は?このが貞子?親戚の子どもだか知らねぇけどイタズラで俺の睡眠時間削るのはやめろよ」


「本当に貞子なんだからね!!信じてくれないなら、私、拗ねちゃうよ?」

「お、お姉さまが女の子してる…(驚)」


「で、事情を説明してくれねぇか?」

「まず、私がオカルト部の部長さんからこのビデオテープ呼ばわりされてるDVDを煉砥がいないからって押しつけられて、家に持ち帰ってからプレイヤーに入れて見ようとしたんだけど、不気味な画面が映ってその中にいた貞子が今の輪廻ちゃんの状態になって出てきたの」

「それで、この輪廻って娘は責任持って俺が管理すりゃいいのか?」


「ダメ!!輪廻はお姉さまの妹なの!盗らないで!」

「かなりなつかれてるみたいだな。そんで、夜に何かあったりしたか?」


懐いてる、っていうよりは、シスコン?


「私が寝る前には少しだけ大きくなってた気がしたんだけど、深夜の2時に起きたらあのイメージ通りの貞子で…」

「つまり、夜が深くなるにつれて体が成長して朝になるにつれて元通りになるってワケか。もし俺と綾香が2人暮らしする日が来ても輪廻を連れてくのか?」


「ちょっと!?お姉さまは輪廻のお姉さまだから彼氏さまにはあげません!!!」

「おいおい、だったら俺たちが結婚するってなったらどうするんだ?」

「結婚?」

「ああ、この世では愛し合った人間はうまく付き合うことができれば最後には永遠の愛を誓って法律の下で添い遂げるんだ。まぁ、世の中には法律の下で永遠を断ち切るような連中もいるが」


「れ、煉砥、さすがにまだ輪廻ちゃんに結婚の話は早いんじゃ…」

はえぇかおせぇかの違いだろうが。俺は綾香のことは好きだしよぉ…」

「きゅ、急にどうしたの?寒さで頭がやられたなら私が温めてあげるけど…」


「2人とも、顔真っ赤だよ」

「あ、ごめんね。別に変に気にしなくていいよ」

「輪廻も、お姉さまが彼氏さまをあっためるならあっためてあげる」


「よ、余計なお世話だ!とりあえず、俺は帰る!」

「コーヒーくらい飲んでったら?」

「別にいいよ、そんな長居するつもりじゃなかったし」

「輪廻ちゃんはいいの?」

「輪廻は綾香に懐いてるから引き続き頼むわ」

「え?あ、うん」


「よかった。これからもお姉さまと2人切りでいられるね!」


まぁ、今は輪廻ちゃんが幸せならそれでいっか。輪廻ちゃんがシスコンなら私がいつまでもそばに居てあげないとね。


続く

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