第2話 私も『家族』

オカルト部から貰った呪いのビデオテープ――どうみてもDVD――から出てきた貞子?ではなく謎の超絶美少女、輪廻ちゃん。お父さんはいない、お母さんとははぐれた、とのことで私が預かることになったけど…。しょっぱなから『お姉さま』呼び…可愛いすぎる。破壊力がすごい。


「ねえ、輪廻ちゃん。夜ご飯にするんだけど、何か食べたいものある?」

「輪廻、人間さんの食べ物はまだ食べたことなくて…」

「じゃあ、前までは何食べてたの?」

「人間さんのタマシイ?か何かだよ」

「た、魂!?」

「うん。そのタマシイっていうのが人間さんの何かは知らないけど、いつもお母さんが『若くてみずみずしいのを食べていいよ』って言ってたのは覚えてるよ」


もしかして、輪廻ちゃんが超絶美少女なのって、輪廻ちゃんのお母さんが輪廻ちゃんに若い魂ばっか食べさせてたから!?


「じゃ、じゃあ、人間の食べ物は初めてってことかな?」

「うん。だから、お姉さまのオススメのでお願いします」

「わかった。じゃあ、みそ汁でいい?」

「みそ…汁?」

「うん。日本の伝統的な家庭料理の1つで、家庭の数だけ味があっる、って言われてるほどなんだ」

「へぇ。」

「ちょっと待っててね」


「はい。私のお母さん直伝の味。食べる前に『いただきます』って言ってね」

「いただきます?」

「日本では、ごはんの前に神様とか、材料を作ってくれた人に

感謝するんだよ。」

「じ、じゃあ、いただきます」

「熱いから気を付けてね」


輪廻ちゃんが一口みそ汁飲んだ時、私はとてもドキドキしていた。みそ汁が唯一の得意料理だし、もしも美味しくないなんて思われたら…。

輪廻ちゃんの方を見ると、輪廻ちゃんは満面の笑みをしていた。

「ゴフゥ…」

は、破壊力が…

「お、お姉さま、大丈夫!?」

「だ、大丈夫。それより、みそ汁美味しい?」

「うん、美味しい!輪廻、これ好きかも」


誰かに自分の料理を美味しいなんて言われたのは2人目(1人目は煉砥れんと)。やっぱり嬉しい。


「ならよかった。これからもテレビとかで見て作って欲しい料理があったら言ってね。」

「うん」

「そういえば、お姉さまのお父さんやお母さんはどうしたの?」

「私、親離れしてこうやって都会の学校行ってるんだ」

「とかい…?」

「都会っていうのは、たっくさん人がいて、いっぱい建物がある

広い町のこと。私、田舎の育ちなんだけど、親が『高校と大学くらいはいいところ行け』って言って今は名古屋に住んでるんだけどね」

「なごや…」

「まぁ、それでアルバイト始めたおかげで煉砥とも会えたんだけどね」

「ねぇお姉さま。お姉さまって今すぐお母さんに会えるの?」

「今すぐ、はちょっと無理かな」

「なら、今はお姉さまは輪廻の家族。輪廻もお姉さまの家族、だね」

「私も、輪廻の家族…」


何というか、今までそんな話を友達ともしたことがなかったから少しくすぐったい感じ。でも、悪くない。

その時、スマホが震えだした。


『おい綾香、お前勝手に部長から何か受け取っただろ!?』

「うん、そうだけど」

『そうだけどじゃねぇよ!もしそれでお前に何かあったら俺にどうしろっていうんだよ!?』

「でも、煉砥だって今日一日中連絡取れなかったけど何かあったの?」

『お、俺はただ体調が悪かっただけだよ。それより、ビデオテープ見たりしてねぇよな?』

「やっぱりオカルト部はみんなあれのことビデオテープ呼びしてるんだね。あれなら見たよ」

『おい!それで、貞子は出たのか?呪いにかかったりしてねぇよな』

「呪いにはかかってないけど、貞子ならいるよ」

『おい、今どういう状況なんだ?』

「私があのビデオ見てたら画面から女の子が出てきて、名前は輪廻ちゃんっていうの。輪廻ちゃんは…」

『そんな呑気なこと言ってる場合か!?』

「でも、全然危なくも怖くもないよ。何しろ超絶美少女だし。今は私の家でみそ汁飲んでるよ」

『ま、まじか…。だったら、明日確認しに行くからそれまでに何かあったらすぐ連絡しろよ』

「分かった。じゃあ、また明日」


「今何してたの?板に向かって話してたけど…」

「これ?これはスマホっていうの。まぁ、いつか輪廻ちゃんにも買ってあげるね」


しかし、私は深夜2時に想像し得なかった事態と遭遇することになる。


続く

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