ホワイトプラネット、いこう

かぎろ

幾億のねむる天使



 きみのもつスノードームに吸いこまれ 世界の果てはぼくのゆびさき





 てのひらに降りてきた雪きえてゆくぼくのからだが生きてるせいで


 生きている価値がないのに生きていてきみのひとみを思い出す罪


 うつくしい霜の柱を踏んでいたぼくから先に消えるべきです


 輪をつくる 踏み台に立つ 台を降り、 輪をつくる 踏み台に立つ


 ぜんぶぜんぶ諦めたのにぜんぶぜんぶぜんぶ無駄なのに考える脳


 しあわせは近くで見るとこわいから独りのままでかまわなかったはずだったのに朝がきたんだ


 朝が


「あなたはいくつ冬のひかりをしっている? 当ててみますね。じゅうに? じゅう、さん!」


「霜柱、いっぱい踏んで歩きましょう。え? 何でって、ざくざくだから……」


「あなたにもわたしにもあるものだから怖がらないで。そっとほどいて」


「わたしには十五の冬があるけれど、としうえなのね、とししたみたい」


「うれしくもなくもないけど、はじめてです。スノードームに喩えられるの」





 幾億のねむる天使が落ちてくるぜんぶが無為にとけるとしても





 たどりつく ここはホワイトプラネット


「みせてあげたかったのホワイトプラネット。白の宇宙と白の惑星」


 冬の朝 凍ってしまう刻のなか雪をすくうと薔薇のまぼろし


 まっしろな世界のきみはまっしろで「あなたもとてもとてもまっしろ!」


 まどろんだ天使のゆくえ 純白は透明になりもうわからない


 てのひらでとけていく羽 生きているせいで失うすべてについて


「これからもずっと失いつづけます。でもなんとなく、暮らしませんか」


 かじかんだ手でかじかんだ手をとってどうしてあたたまってくふしぎ


 きみの目がスノードームにみえた夜わからないのに狂おしかった


 ゆびさきが世界の果てでほんとうの果てには届かないはずだった


 いまならば言える気がする。まだ何も言ってないのにきみが振り向く





 いつかきみさえも失う とけていくねむる天使よどうか光って


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