第18話
「すごいでしょ!あれが世界樹!私たちエルフ族のシンボルよ!」
『樹高二千五百メートル、幹直径千二百メートル 樹冠直径最大二千メートル 古代エルフが持ち込みこの星に根付いた巨樹です。』
「ふわぁー!」
スティアが自慢げに言うのも分かる、ヘレナも迫力に圧倒されて言葉が無いようだ。常緑の葉を繁らす横に伸びた巨大な枝からは無数の気根が下に向かって伸び、その気根からも根が生えている。物理的と生きる為に必要な養分補給との支えになっているのではないかと思うが、その様子は世界樹単体で一つの森、巨樹の極相林を形成しているようにも見える
光を遮られた日陰が夕方のように暗く、日照時間の関係か他とは違うと一目で判る植物が生えていた。
「私も帰ってくると暫くここから眺めてるけど、日が暮れちゃうから行くわよ!」
丘から続く斜面に張り付くように作られている九十九折れの細道をゆっくり下る。平原まで降り、しばらく歩くと上からは気付かなかった砦と城壁が見えてきた。
「この砦の中がスティアの故郷?」
「少し違うわね。 あっ、おじさーん!久しぶりー!」
「んー、おおぉー! スティアか!? 20年ぶりかぐらいか!相変わらず人間の町でハンターなんかやってんのか?」
「そうね、その位かしら?おじさんも変らないわね。今も枝下の町の衛兵専門?」
でかい声でガタイのいいエルフのおっさんにスティアが声を掛けた。
「おうよ!ここは里のもん以外通る奴はめったにいねーから、昼寝し放題の天職だからな。」
「ほんとに相変わらずねー」
「何言ってる、うちのばーさんなんて瞑想するつって世界樹の社に登ったっきり300年も降りて来ねーぞ。」
豪快に笑いながらエルフトークをかましていた。
「ところで、そいつらは?今のお仲間か?」
「そうよ!私、今はこのケイのチームに入ってるの♪」
「初めまして。ケイと言います。宜しくお願いします。」
「ヘレナです!宜しくお願いします!」
「おう、ここの衛兵のロドスだ 宜しくな!里のもんの連れなら面倒な手続きは無しで大丈夫だ。スティアが付いてりゃ迷う事もあるめー!」
「それじゃ通るわよ。」
「おお、エルティアとシルバンにも宜しくな!」
荒っぽいけどいい人みたいだ。僕達が通り過ぎると長椅子に座って昼寝態勢にはいっていた。
門をくぐると砦の中庭、そこには、
「ここからは、この子達、ワイバーンで飛んで行くのよ!」
「おお!」「かっこいいです!」
5匹の飛竜、ワイバーンが手綱に繋がれて餌を食んだり、毛繕いをしたりしながらノンビリと寛いでいた。
「こんにちわー!ファーノさん!運んでもらえる?」
「あら!スティアじゃない!久しぶりねー。この子達は?あなたの子供?」
「違うわよ‼」
定番の自己紹介の後、
「じゃ、行くわよ!」
騎手が首元に乗り、僕達3人は取っ手付きの大きなバスケットの中にいた。飛び上がったワイバーンが取っ手を掴み更に羽ばたくと一瞬の浮遊感と一緒に籠が浮かび上がった。
高度をあげていくと眼下の風景が遠ざかり、砦が小さくなってゆく。
バスケットの作りは当然のように吹き曝し。荷物を掴んでいるからかそんなにスピードは速くないけど、それなりに風は当たってくる。備え付けの毛布を被って寒さをしのぐ。
「さむーい」と言ってヘレナが懐に潜り込んで来た。その後毛布を被ったスティアも背中にくっ付いてくる。
「寒いから私もケイで温めて♪」
「うむ、余は満足じゃ。よきかな。よきかな。」
暫く飛ぶと、世界樹の樹冠が近づいて来る。
「もしかして、ノイスイェーナって木の上?」
「そうよ!樹上都市ノイスイェーナよ!」
近くへ来ないと見えないけれど、枝から枝へこの前見たような蔓橋が掛かり 巨大な枝のあちこちに、これも枝が絡まりあった広大なテーブルが乗っていた。テーブルの上には隙間なく板が敷かれ、テーブル一つが一つの村になっているみたいだ。街?町?村?都市では無いと思う。
「高所恐怖症の人は住めないな。」
「なにそれ?高い所が怖い?そんな人ここでは見た事ないわ」
そりゃ ここにはいないだろう、そんな人いたら生きてけないだろうし、生まれてからずっとココにいれば慣れるのもあるんだろうし。
三人で固まってワイワイ話してたら目的地に着いたらしい。
円形の何もないテーブルの上空でホバリングして軽いショックと同時に篭が降ろされた。
「ファーノさんありがとー!これ料金ね」
「毎度!お客さん、楽しんでいってね!」
そう言うと、ワイバーンに乗り再度飛び立っていった。
「さすがにここだとテントって訳にはいかないから まずは宿は探し?」
「大丈夫よ!うちに帰れば部屋はあるから、、、、、それと、、、両親に挨拶して。。。」
「わかった。ただし10歳が挨拶して大丈夫なの?」
突然変異の長命種で成長が遅いとでも言っとくか?
「わからないけど、胡麻化すのは嫌なの。」
◇
「ただいまー!」
スティアの家について行って、母、エルティアさんと 父、シルバンさんを前に居間で自己紹介の後挨拶をしている。
「お父さん、お母さん、娘さん。スティアさんを娶らせて下さい。お願いします。」
「私ここにいるケイと結婚することにしたの、歳の差はあるけど、決めたの!」
覚悟を決めた表情で説得をしようと意気込んでいるスティアの前でごお父さんが泣いていた。お母さんはニコニコと笑っている。
「良かったなスティア、理想の方と結婚出来て。お父さん、スティアは結婚できない物と諦めていたんだ。良かった、ほんとーに良かった。」
「ん゛?どいうこと?」
スティアが問い返すと、
「どういうことって、私たちがスティアの好みに気付いてないわけ無いじゃないか。ある程度の歳になって他の娘達が男の子と付き合う事に興味津々だった時でも、そっちには興味も示さず告白されても片っ端から断って、男女問わずで小さくて可愛い子ばっかりずーっと目で追ってたし隙あらば縁を作って一緒に居ようとしてたじゃないか。襲い掛かかるとかは無かったから放っておいたけど、あの頃は心配したもんだよ。
そーいえば、あの頃好んで着てた黒一色の服とケープと変な形の帽子、記念にとってあるぞ」
「良かったわね。スティアちゃん 理想の相手と巡り合えてて、お母さんも生涯独身じゃないかって思って心配してたから、安心しちゃった♪ ケイさんスティアを宜しくね。あなた以外じゃこの子絶対!結婚できないと思うから♪」
わりとひどい事言われているが、Q.E.D.・・・知ってた。
「ありがとうございます。スティアは必ず幸せにします!」
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