第16話

滝壺キャンプ場を後にした僕たちは、その後トラブルもなく山間の道を上り、順調に高度を上げて峠を越える。

既に樹森林限界は足元の遥か下になり、岩塊や石、砂礫だらけの高山帯。各所に雪渓が残り空気はまだ乾いて冷たい。けれど、その合間にある小さな陽だまりには早春に咲く高山植物が花畑を作り、風に揺れる花々の間を透ける黄色の翅をもつ蝶が妖精と一緒に飛び回っていた。

「わー キレイです!こんな寒いのにお花と蝶々がいっぱいです!」

「この辺は故郷と変わらないな。ここも氷河期とかあったのかな?」

「氷河期って何?」

「何万年?も前とかに気候が凄く寒くなって地面の上に降った雪が凄い量積もって北の方全てがものすごい量の雪が固まった氷で埋め尽くされてた時期」

「そんなのヒューマンに比べて長寿の私たちエルフの伝説にも無いわよ?さすがに何万年は遡れないと思うけど、、、それにそんな事になったら生き物みんな死んじゃうじゃない?」


『この星にも氷河期はありました。ただし地球の年齢より若いこの星では、まだ数える程度の氷期しか経験しておりません。』


「なに?今の声?頭の中で、、、? ねぇ、ケイ!あなたも聞こえた?へんな声が話しかけてきたの、、、、やだ、何かいるの?」

ソフィアさんや?なんちゅー事をしてくれますの?説明する身にもなって下さい。


『どのみち今晩には全て開かすのですから、早い方が良いかと。全部まとめてより私から説明して埋めていった方がショックが少ないと予測しました。』

「また聞こえた!、、、、やだ、怖い!」

「落ち着いて、今のは僕たちの案内役をつとめるソフィア。僕達がこっちの世界の来た時についてきてくれた実態が無い生き物?」

パニックになってしゃがみこんでしまったスティアを抱きしめてなるべく優しくなでながら説明した。

『最後が微妙に引っ掛かりますがその説明であっています。初めましてスティア様。ケイ様に従っております精神体メイド・ソフィアです。お見知りおきを。』

「もう秘密は無いと思ってたのにー。ケイ! これで最後よね?もう無いのよね!?」

「ごめん、まだある。スティアが昨夜裸になってた件と係わりあって、今晩また来る予定の秘密?」


「まだあるの?私これでもヒューマンより長生きしてるのよ? 色々経験してるのー。 なのに最近子供の頃に戻っちゃったみたいで凄く不安なのーーーーー!」

あんまり激しく揺すらないで、脳ミソが崩れちゃうーー。

「だよねー。普通そうなるよね。もうちょっと下った先に開けた所が見えるから今日はそこで休も!決めた!反対は無し!!」


とゆー訳で、お昼近いし今日の旅路は終了!パニックになってる時に何かやっても碌な事無いし。そんな時には一時休止。


停滞を決めたので、いつものごとくテント二張り、風呂、火床、トイレを設置して設営完了。昨日のイワナも暇があったら燻製しちやうか。収納に入れとけば時間が止めとけるのは分かるんだけど、なんとゆーか癖みたいなものです。


お昼は簡単に収納に入っていた余り物、頂いたお味噌汁とか残ってたご飯とか焼き燻製とか道々採取してきた野草とか果物とか、、、意外と豪華だな。


テンション下がり気味のスティアは少し休むらしい、不安そうな顔してたので、ヘレナに一緒に寝て貰えるか聞こうか?と尋ねたら、「ケイがいい」下をむいて小さい声で言いながら上着の裾を掴んできた。よほど参っているみたい。


「ソフィア、ヘレナの事と後頼む」

『承知しました。他の事は懸念せず、ゆっくりと寛いで下さい。』

ヘレナは、分かってるよ、ふっ!

と表情で語り、僕の腰を二回叩いて黄色いアヒルとタオルの入ったオケを持ちお風呂場の幕の裏へと消えていった。



「昼間だし寝袋は暑いよね?タオルケットかぶればいいか。僕が横で寝てるから、安心して寝て。」

横になったスティアにタオルをかけて僕も横になる。

横を向いて見つめ合うと顔と顔が近い。

「ごめんね。最近気持ちが落ち着かなくて、ケイが頼りになりすぎるくらい頼りになるから、つい頼っちゃった。」

「気にしないでよ。美女に頼られるなら、それは男の本懐だから」

「見た目は女の子なのにね。あと何度目かだけど本当に10歳?」

「まあ、その辺は色々と複雑な事情がある。」


「あとね、今回のことではっきり分かったんだけど、やっぱり私ケイの事が好きになっちゃったみたい、、、歳がすごく離れてるから迷惑だと思うけど、、、」

ここで歳聞いたら不味いだろうな?エルフの寿命がどんなもんか聞いてないけど、スティアはその中でも若年なんだろう。きっとで、よしんばそうじゃなくても熟女なら熟女で未熟な若い娘とはまた違った魅力が、、、そーじゃなくて。

「うん、僕もスティアの事好きだよ。子供の感覚で好きって言ってるんじゃ無くて、スティアが欲しいって意味も含めて。」

真っ赤になったスティアに顔を寄せて軽くキスをする。二度目はディープに、お互いが飽きるまで、その後は、、、


◇◇◇◇◇


「さっきはお盛んでした!!」

「直球!?」

『サービスで遮音結界を張っておいたのでご安心ください』

「ありがとうソフィア 、ヘレナのいるところで大っぴらにしちゃ不味いとは思うんだけど、こーゆーのは難しいね。」

「心配ご無用です。女神として当然、性の教育も受けているのです。生物としてはとても重要なことなので隠す必要はないのです。もし目の前で始まってもヘレナは大丈夫です!」

「人前ではしないから。それとそのモザイク掛けなきゃいけないハンドサインはしちゃいけません。」



「さっきは、ありがとう。おかげでよく寝れたし、疲れも無くなったから体が軽いわ♪」

夕飯を作っていると、ちょっと赤い顔をして、スティアが起きてきた。この感じだと他の二人にはバレてないと思っているのかもしれない。必死に声を抑えてる姿が可愛すぎて 意地悪でちょっと激しくしちゃったんだが。あっヤバい思い出したら、、、、、般若心経を口遊んで待機状態に移行。


「まだご飯できないから、お風呂入っちゃえば?」

「そ、そうね寝てて汗かいちゃったし、ちょっと流してくるわ」

ニヤついているヘレナをワシャワシャして、鎧竜アルマサウラから新たに切り出した肉でステーキを焼く。

「ここらへんだとサーロインかな。僕らだけだと減らないねー」

『都市部へもって行けば、食肉として売れます。皮も素材として引き取ってくれると思うので保存しておいて下さい』

「ダメです!このお肉さんはヘレナのお楽しみなので、他の人にはあげません!」

僕たちで全部消費するつもり?他にもいろんなの獲って食べてみたいけどな。


「それじゃ、スティアの里へ行ったら暫く滞在させてもらって、集中的にいろんな獲物を狩ってみようか?」

「お兄ちゃんナイスです!飛龍とか古龍とか霊亀のステーキとか朱雀の焼き鳥とか、夢が膨らむのです!」

狩っちゃいけないもののオンパレードだね。へたするとコミュニケーション取れそうだし。



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