第39話 同類

「同じ、ブロッサム……」

 家に帰宅し、玄関でそんなことを口にする。

「なんだろう。変な感じ」

 あの少女——澪は、自分と同じブロッサムだと言った。

 だからなんだ、としか普通は思わない。だが、リリーは何か変な感じがしていた。

 そんなことを思いつつ、慣れた手つきで靴を脱ぎ自室に入ると、制服を脱ぐよりも先にスマートフォンを取り出した。

「……蓮人くんに訊いたら、分かるかな」

 スマートフォンには、日暮蓮人の連絡先が映っていた。

 数秒して、蓮人が電話に出る。

『リリーか?急に電話なんてどうしたんだ?』

 急な電話にも出てくれた蓮人。その声は少し緊張している感じがあった。

「あ、うん。紫原澪ってどんな子?」

『……澪、だと?まさか、会ったのか?』

「ちょっと用事があっていつもとは違う道を歩いていたら、会ったの」

『…………』

 澪に会ったことを伝えると、くぐもった唸り声のようなものが聞こえた。

 そして数秒間が開く。

 どうしたのだろうと思い、こちらが口を開こうとした時。

『彼女は、ハッキリ言って危険よ』

「……ッ!?」

 蓮人ではない声が、耳に響く。

「あ、あれ……蓮人、くん?」

『ああ、私よ。ピジー』

「あっ、妖精ちゃん……」

 少々刺々しい言葉なのは、妖精であるピジーだった。

「それで……何が危険なの?」

『彼女はブロッサム、アイリスよ。だけど、リリーとは違う種類のブロッサム』

「違うとかあるの?」

『ええ。本来であれば、ブロッサムになれるのは適性が高い人だけ。けれど彼女は——適性が無いのに、ブロッサムへと変身した』

「——っ」

 リリーは息を呑む。

『まったくと言っていいほど、こんな例はないわ。多分、彼女が初めて』

「適正が無いのにどうして……」

『さあね。私もフェアリーも知らないの。適性がないから——ブロッサムとしての力をコントロールしようとしないの』

 怪訝そうな声で、そんなことを言って続ける。

『何が危険かって話よね。いつ、どこでブロッサムとして活動をするか分からない。そして、彼女の力は未知数。彼女と戦ったブロッサムは、危うく死ぬところだったらしいわ』

「…………」

『つまり、戦ったら死ぬ』

 その一言が、重々しく聞こえた。

『当分の間は変身しないとは思うけれど、接するときは気を付けて。何かあったら、私たちに言ってね』

「う、うん……」

 こちらが切るよりも先に、あっちから電話を切った。

「…………」

 無言でスマートフォンの電源を切り、制服を脱いだ。

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