第6話 人間界に来て、初めて知ったこと

「くぁぁ……っ」

 カーテンの隙間からは眩しいくらいの光が、蓮人の顔に当たる。

 5月3日、水曜日。まだ目覚まし時計は鳴っていないが、眩しすぎる光によって蓮人は目を覚ました。

 蓮人はあくびを噛み殺しながら目をこすり、目覚まし時計に手をかける。

 時刻は朝7時を回った所だった。

 このまま二度寝したら絶対に起きれないと判断した蓮人は、目覚まし時計のアラームを切り、上体を起こすと同時に。

「おはようございます、蓮人さん。……あ、起きてました?」

 もこもこしたパジャマに身を包んだフェアリーが静かに蓮人の部屋に入ってきた。どうやら蓮人を起こしに来たようだ。

「ああ……今起きたとこ」

「寝ぐせ、すごいことになってますよ?」

「えっ」

 少し笑いながらそう言うフェアリーに対し、蓮人は手で寝癖を直そうと必死になる。

「……はぁ」

 だが、寝ぐせは直るわけはなかった。

「ていうか、そんなパジャマ持ってたんだ?」

 最初に気になったのはフェアリーの恰好。こっちの世界に来るときに持ってきたのだろうか。

「あ、はい。あっちの世界から出るときに、一応バッグに入れといたんですよ」

「ああ、なるほど。それと、ピジーは?」

「多分、まだ寝てると思います。以外に朝起きるの遅いんですよ」

「そっか……それじゃあ、朝ごはん軽く作るから手伝ってくれ」

「あ、はい!」

 蓮人は一度背伸びをし、おもむろにベッドから立ち上がった。


 今日の朝食は、他の家庭となんら変わりのないものだった。トーストしたパンにバターを塗ったもの。焼いたウインナーと目玉焼き。

 それを二人分作った。

「いただきます!」

 フェアリーはそう言うと、一目散にウインナーにフォークを刺し口に運ぶ。

「おいしい~っ!」

 そして蓮人を見ながら笑顔でそう言った。

「ははっ、そう言ってくれると嬉しいよ」

 他人に料理を作り、それが高評価されることは蓮人にとってものすごくうれしいことだった。

「昨日から気になってたんだけど、妖精って何でも食べるんだ?」

「まあ、基本的には何でも食べますよ。妖精界にある食べ物も、人間界にある食べ物とあんまり変わらないし」

 一瞬でウインナーを食べ終えたフェアリーは、次はパンに手を出した。

「へー、それならご飯を作るときは気にしなくていいんだな」

「らいりょーぶれす!」

「……食べてから言えよ」

「……んく。私も気になってることがあるんですけど、なぜか体がいつもより重く感じてるんです」

「…………それは、体重とかじゃなくて?」

「体重じゃありません!……恐らく、私たちのが関係しているのかと」

「まりょく?」

 そう言われ、蓮人はフェアリーを見ながらぽかーんとしてしまう。

「そう言えばまだ言ってませんでしたね。では、朝食が終わったら短めに話します」

 そう話を切ったフェアリーは、残っているパンを口の中に押し込んでいった。





 


  


 

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