第5話 妖精界と魔界

 家に帰宅した蓮人は、一度自室に戻りジャージ姿に変わると、リビングへと向かった。

 リビングでは、ピジーが物珍しそうに物色をしている最中だった。逆にフェアリーは、大人しくソファに座っている。

 蓮人がリビングに来たことを確認するとびっくりして、慌ててソファに座り直した。

「それで……妖精界から来たって言ったっけ?」

 蓮人は、一応二人分のお茶をコップに移し、フェアリーたちに配る。

「あ、ありがとうございます」

 フェアリーはお茶を受け取ると、コップに口をつけお茶を一口飲んだ。

「それでは、ちょっと長くなるんですけど話しますね」



—————————————————


「——っていう事なんですけど……なんとなく分かりました?」

「うん。ある程度は理解できたよ」

 

 蓮人たちがいる人間界の外側には、『魔界』と『妖精界』の二つの世界がある。


 フェアリーは帰宅途中、自分たちの敵である<ベスティア>という黒い怪物が、妖精界を襲いに来た。何のために襲いに来たのかは分からないが、<ベスティア>のせいで妖精界が地獄のような場所に変わりつつあった。

 <ベスティア>によって命を落とした妖精も何人か。

 そんな自分の世界を何とか救おうと思うも、<ベスティア>の方が妖精たちよりも力は強い。そこで色々考え「人間の力を借りれば何とかなる」という結論に至り、ピジーにもそのことを伝えた。

 その後なんやかんやで人間界へやってきたフェアリーとピジーだった。


「なるほどね。今の妖精界は、結構大変なことになってるんだ?」

「はい。かなり危険な状態になっていて……もしかしたら、もうすでに妖精たちは……」

「そんなことないでしょ。まだ全員が死んだって聞いてないし」

「……そう、だね」

 今どれぐらいの<ベスティア>が、妖精界に侵入しているかは分からない。かなりの数が侵入していたら、そこにいる妖精たちのほとんどは負けているだろう。

 果たして蓮人には何ができるというのか。自分も、フェアリーとピジーも、それはまだ分かってない。

「……と、とにかく。ゆっくりしていっていいからさ。あ、夜ご飯の支度しないと……」

 壁掛け時計は午後7時を指していた。蓮人は一度背伸びをしてから立ち上がると、ゆっくりとした足取りでキッチンへと向かう。

「あ、蓮人さん。もしよかったら……私、手伝いましょうか?」

 何か手伝えるものかないかと、フェアリーは蓮人に尋ねる。

「え、いいよ。これくらい一人で大丈夫」

「でも、このまま居座るっていう訳にはいかないし……っ」

 フェアリーとしては、わざわざ家に招いてもらったのに何もしないというのは気になるようだ。

「うーん……じゃあ、作った料理を皿に盛りつけてもらおうかな」

「あ、はい!頑張ります!」

 蓮人に仕事を与えられ、ぱぁっと表情が明るくなったフェアリー。

「……はぁ。妖精界が大変だって言うのに」

 対してピジーは、まるで自分の家かのようにソファに寝転がった。


 

 





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