不思議なお茶会と破滅の弾丸⑲
東支部から出ると、入口の所に白い車が止まっていた。
車の窓を開けてゆっくりこちらを見た和樹は、後ろに乗れと合図する。
それに従って結紀は車に乗り込んだ。
「普通の車で悪いな」
「いえ、そんな……」
「王戸でもそこまで立場が強くないから、派手な真似は出来ないんだ。乗り心地悪いかもしれないが、我慢してくれ」
そんなこと言われなくても、そもそも乗せてもらえているだけでありがたいので何を返したらいいのか戸惑っていた。
そのうちに和樹は車を発進させる。
「東支部に配属されてんだから、咲良だろ?」
「そうです」
「この辺にはあそこしかないしな」
和樹はカーナビを操作して場所を確定させると、そこに向かって進み出す。
「似てないって思っただろ、俺と遥日。そんな顔してた」
「……すみません」
「謝んなよ、悪いことしてる訳じゃないんだしさ」
「なんか申し訳なくて」
結紀の言葉に気にするなとだけ返して和樹は口をとざす。
初めて会った人と何を話していいのか分からずに、車内に気まずい空気が流れる。
「他の支部って見た事あるか?」
「いえ、東しか見た事ないです」
「なら、今度西に見に来たらいい。東以外の状況も知っておいた方がこの先自分の為になる」
他の支部と東は違うと茜が言っていたことを思い出し、確かにと頷いた。
知っていることは多い方がいいだろう。
「西は何時でも解放してるから、何時でもどうぞ」
「勝手に決めていいんですか?」
疑問に思って問いかけると和樹は当たり前だろと呟いて話を続ける。
「ん? あ、そうか。俺、西支部長だから権限は当たり前に持ってるぜ。言ってなかったけ?」
「聞いてないです」
「俺は西支部の王戸家にして、西支部長。茜と立場は一緒だな」
そう言って誇らしげに笑った和樹は、結紀よりも遥かに上の位置にいるように見えた。
「これから西支部に戻るんですか?」
「いや……東で仕事があるからまだいる」
和樹はわざわざ結紀を送るために出てきたのだろう。
こんなことが自然に出来てしまう所もホストと呼ばれる理由だろうか。
「まあ、ついでにねずみにも会っていくさ」
遥日の兄としての立場上か、息吹と親しいようで懐かしそうにそう名前を呼んでいた。
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