不思議なお茶会と破滅の弾丸⑳

 教室へ入ると、息吹が眠そうに教科書を広げていた。


 力は結紀が来たことに気がつくと、直ぐに手を振ってくる。


 手を振り返してから、三席しかない教室を見回した。


「……何してたの?」


「飾り付け?」


 教室は折り紙でおられた花で飾られていて、入学式のような雰囲気が漂っていた。


 しかし、今日は入学式でもないし、新しい人が入るという話も聞いていない。


 困惑していると、結紀の後ろから和樹が入ってきた。


「王戸、和樹? なんでここに。今日はカリキュラム外……」


 息吹がそう言うと、和樹は顔出しただけと告げて教室の中を見て回っていた。


「そう動かれると迷惑」


「なら座っててやるからちゃんと授業しろよ」


 折り紙まみれの教室を見てから、釘を刺すように和樹はそう言い放つ。


「もしかして、監査とか言わないよね」


「さあどうだろうね」


 何の話をしているのか分からなくて首を傾げていると、力が小さな声でぽつりと呟く。


「アリス関係の教員は、王戸家から定期的に審査がはいんだよ。それに合格出来なきゃ、教職を外される」


 窓際の机に座ってから、力と会話を続ける。


「ここも管理されてるってこと?」


「そりゃ、変なこと教えてたら困るしな」


「まあそれはそうだけど」


 殆ど寝ているような状態の息吹がその審査に受かるとは思えなくて不安が過ぎる。


「大丈夫だ、ああ見えてあの人は最有力候補の教員だから」


「そうなの?」


「お前、授業詰まったことないだろ? 学科変わってすぐなのに」


「確かに……」


 結紀は成績のいい方の生徒では無い。


 その結紀でも、ついていけるぐらいの授業をしているので、息吹は優秀なのかもしれない。


 透や、力は成績優秀な方の人間であるが、それも息吹のおかげなのかもしれない。


「まー、でも結紀はもうちょい頑張った方がいいけどな」

「……頑張ります」


 一通り会話を終えて、授業に向き直った。

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