第8話 受話器から聞こえた声

 中学生の頃というのは、特に得体の知れない体験をよくしていた記憶がある。やはり私の力が目覚めていたのだろうか。中二病というのもあながち間違いではないのかもしれない。


 あれは私が中学生の頃。


 実家に置かれている固定電話から呼び出し音が鳴った。近くにいた私は、何の気なしに受話器を取った。


「もしもし」


 ザァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアア。


 受話器越しに聞こえてきたのは、砂嵐の音。古いテレビが番組を映さない時に流れるような、耳障りな音が流れていた。


 いたずら電話か?


 そう思って、電話を切った。


 しかし、数秒後、また呼び出し音が鳴った。私は受話器を取る。


「もしもし」


 ザァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアア。


 再び響きだした砂嵐の音。気味が悪かった。けれども私は、好奇心からしばらく受話器を降ろさずにその砂嵐を聞いていた。


 しばらくすると、しだいに砂嵐の音が小さくなっていった。途切れ途切れになり、なにも聞こえなくなる。すると次の瞬間、可愛らしい女の子の声が、一言。


「おめでとう」


 プチッ、ツー、ツー、ツー、ツー……。


 電話は切れた。


 ただのいたずら電話だったのか? けれどもいたずらにしては、砂嵐の音や最後の言葉が不可解だ。


 私は、なにか祝福されることをしただろうか?


 ほんとに、あの電話の声はなんだったんだろう……。

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