第32話 ささやかな
「帰って来たぞ!……空気が美味しいぞ!」
ポコちゃんの山小屋の前に無事に戻れました。異空間部屋は必ず入った時の場所に戻りますので残念ながら転移魔法の様な使い方は出来ません。
夜が明ける迄にはまだ大分時間がある様です。今頃坊ちゃま達はぐっすりお休みでしょうね。
「うるさいお子様ですネ。夜なんだから静かにしなさイ。
「鵺ですか。頭が猿で胴体が狸か虎だったりキメラのような化け物でしたね。ポコちゃんみたいな子が大好物らしいから、頭からバリバリと食べられてしまいますね」
「ひい!……そんなのが居るのか?怖いから静かにするぞ」
この世界には居るかどうか分かりませんが、子供の躾けの決まり文句の様なものです。緋色ってお母さんしてますよね。
「さて早速ですが緋色。この黒い石なんですが、ポコちゃんを襲撃してきた大妖魔の様な者の眷属を斃したら残した物です。でも私たちの世界のとは違う様で、さっぱり解析出来ませんでした。
そこで癪なのでこの石を通して眷属の親に神気を送り込んで、ささやかな警告をしたいのですが協力してください。」
「この石に残っているのは確かに邪気とは違う様ですネ。恥ずかしながら邪気とのつきあいの長い私には分かりまス。それでどうすれバ?」
「ややこしいのですが、この世界では神気を魔力と言いますが、正しくは神気は聖属性の魔力です。邪気は闇属性の魔力。まあそんな説明は取り敢えず。
緋色は私と息を合わせて同時に石を通して親の妖魔に届く事を念じながら神気を込めてください」
「何故ですカ?神楽様の方がお強いのに態々私の神気などヲ?」
「かつて私が戦った邪鬼は知恵が回りまして、眷属の石を通して神気を受けても平気な防壁を作っていました。でも一度に二種類以上の神気には対応出来ない様でしたのでどちらかが少しは通りました。
この世界の邪鬼モドキも同様な可能性がありますし、もしかすると解析出来ないこと事体も対策を施してあったからだとの懸念があります。
だから遠慮なく思いっきりの神気を念じて送ってください。」
「承知しましタ」
「それでは」 「「……3……2……1……それ!」」
……え?……緋色の神気が暴れて……私の神気もかなり持っていかれて予想以上に多く通る手応えが……
「眩しい!…………うわっ!…………石が爆発したぞ!」
……あ!……私がこの世界に初めて来た時に魔力と神気が混ざるのに時間が掛かって、勝手に太刀が出たりして不安定だったのをすっかり忘れていました。
「大丈夫ですか緋色!」
「……う……何とカ……大丈夫でス…………」
……気を失ってしまいましたか。魔力枯渇の状態ですので心配はなさそうです。
「ポコちゃん。緋色を暫くの間。泊めて頂けないでしょうか」
「お安い御用だぞ。とにかく運ぶのを手伝うぞ」
……まあ、相手が悪鬼程の大物だったら嫌がらせ程度でしょうが。石も破裂してしまいましたし、これで良しとしましょう。また眷属を送ってくれば、もう気配は分かり易くなりましたから。
念の為緋色に、目が覚めたらこの世界への適応化を兼ねて、数日の間ポコちゃんを護る様に。と書置きをして。さて山荘に帰りますか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます