第31話 帰還へ

「また居間に戻ったのか?早く出口を探さなくていいのか?話は難しくて眠くなるし、もうお茶もおせんべいもお腹いっぱいだぞ?」


「そういえバ。この居間は10年程前に突然現れたものでしタ。美味しいお茶とおせんべいが無限に供給されるようになったので、これは天からのご褒美だと思って喜んで居りましガ」


……10年前。私が異空間部屋を作った時期と一致しますね。

 私が造った部屋と、この居間から土間にかけては裏返しで同じ配置です。……まるで鏡に映した様に。


「緋色。祭壇に鏡はありますよね?持ってきて貰えますか?」






……この部屋で色々な方向を映してみましたが反応は無しですね。確かに鏡に映っているのは此処とは裏返しの私の空間部屋の様ですが。神気もわずかに鏡の中から伝わって来ています。


「神楽様。その鏡には大した力が無いと思いますヨ。本来祀られる貴女のつるぎの代わりなのですかラ」


……剣の代わり。


「緋色。祭壇に案内して貰えますか?……鏡は伏せずにちゃぶ台の上に置いた侭にしておきましょう」







……私が眠っていた祭壇。朽ちる前はこんなに奇麗な部屋にあったのですね。

 此処に大太刀の神楽を具現化させて置いてみましょう。


「うわ!眩しいぞ!」


「明る過ぎて何も見えまセン。何が起こってるんですカ?」


「上手くいきましたよ」


「ああ眩しかった……って。何が上手く行ったんだ?」


「……ん?……周りの神気の様子が微妙に変わっている様ナ?」


「さあ、居間に戻ってからのお楽しみです」







「居間は何も変わってないぞ?」


「……あ!……土間に扉が出来てまス!」


「私は10年程前に異空間部屋を造りました。この居間と土間です。でも此処を鏡に映した様に裏返しの配置ですがね。

 この部屋が現れたのは、それと同じ時期だと緋色が言っていましたので、その時にこの空間と繋がったのでしょう。緋色の神気は私が分けたものなので同調したのでしょうね。でも不安定な状態でした。

 御神体の鏡には、此処とは裏返しの私の異空間部屋が写っていましたから、その状態で祭壇に私の大太刀を置いて鏡と同調させて、鏡の力を強くして異空間部屋をこちらに取り込みました。これで此処は緋色の神社であり、私の異空間部屋にもなった訳です」


「そういえば、私は何で此処に居るのかさっぱり分からないぞ?」


「今頃になってですカ?能天気なお子様ですネ」


「敵の目の前でポコちゃんが気絶してしまったので、急いで私の異空間部屋に放り……ご招待したつもりだったのですが。この空間との繋がりが不安定だったのでこちらに来てしまったのでしょう。書置きも追加したのですが?」


「おせんべいがちゃぶ台としか書いてなかったから分からなかったぞ!」


「まあまあ……落ち着いてくださイ。帰れるんだからいいじゃないですカ」


「……さ……さあ、二人とも扉の外へ行きましょうか。」

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