1-8術の派生、氷の灯

その日の翌日、エレンは学校へ行った。


国語、算数、理科など座学の眠い時間を過ごし、体育の時間は分野別の魔術の基礎練習。






この世の魔術は、[始まりの術]である『光術』と『闇術』から派生して出来ている。




この国は光術をつかさどる者が創ったと言われており、学生は光術から派生した魔術のうち、『緑術』『風術』『水術』『火術』『雷術』という[五大光派生術]を体育応用の授業で学ぶ。


といっても個人で得意不得意の差が激しい為、得意な術を選択してマスターするのだ。





五大光派生術の他に全員必修で身につけなければいけないのが[幻六げんむ魔法]と言われる魔術の中の一つ、『守術』だ。


日々の生活には怪我が付き物であり、個人個人で自分の身を守る為に五大光派生術の前に守術を覚えさせられる。





[幻六魔法]は『守術』『化術』『糸術』『鏡術』『音術』『時術』の6つで構成されている事からその呼び名がついた。


幻六魔法は光・闇どちらから派生したのか詳細が不明な魔法の名称であり、守術の他の5つは操ることが出来る魔術師が何百年も前に無くなった為、術の発動方法を知るものは今現在この世に一人も居ないと花先生が前に教えてくれた。







エレンは[五大光派生術]を操ることの出来るシエルの卵だが、その中でも水術から更に派生した『氷術』が得意だった。


エレンは水術を選択したので、転校初日に仲良くなれた、水術を操る珊瑚サンゴと同じ班になった。


今日は水術を操って中に空気を閉じ込めた水風船バルーンを作った。






4時間目の授業が終わり、珊瑚と別れたエレンは共用体育館の中へそっと入った。体育館の中は広く、ここで歌ったらとても響きそうだ。




エレンは幼いながらに強い魔力を持っており、小さな水風船を作るのは息を吸うくらい簡単な事だった。

下の魔術師の実力に合わせて進む授業では物足りず今の実力を試してみたくなったのだ。





エレンは体育館の真ん中へ立ち、静かに目を閉じた。どうせなら大きくて細かいものを...。


想像したものを規模関係なく具現化出来る”異能”を持つエレンだから作れるものを...。


エレンはシャンデリアを想像イメージした。大きく氷でできた輝く水色のシャンデリアのイメージがはっきりとしたら両手を上に伸ばした。


グッと拳を握りしめ、全神経をその手に集中させる。体の血が沸騰するようにざわめいている。


エレンがパッと手を開くと同時にパキッバキバキバキ...という音が鳴る。


エレンの手の中に出来た小さな氷はパキパキと硬化音を立て徐々に建物の天井に向かって硬化しながら伸びていく。


天井に着くと同時に四方八方へ氷が手を伸ばし段々とエレンのイメージとそっくりな氷のシャンデリアに変化していく。あと少し、あと少し...







その時、閉めていたはずの体育館の扉がキーッと開く音がした。



後ろを無造作に振り返ると扉を開けたまま、天井に出来た大きなシャンデリアを見ながら驚いた様子で突っ立っている茶色の髪の男の子がいた。


「えっ...」


思わぬ来客にフリーズするエレン。





「あっ、危ないっ!」と言いながら紫色アメジストの瞳の男の子が走り近づいてきた。


エレンの顔に一粒のしずくがポタっと垂れる。


「冷たっ」


上を見ると同時にシャンデリアを完全に硬化しきるのを忘れていたことに気づき、氷と同じような色にエレンは青ざめた。



上を見た時にはもう氷でできたトゲトゲのシャンデリアは頭上1メートルまで落ちてきていた。


「きゃああぁっ!!」


そこからはコマ送りの映像のように感じた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る