第33話 自分の記憶から逃げないで

「ああ、この目ですか? に飛ばされる前にどうも視力を奪われちゃったみたいで・・・・・・。でも大丈夫ですよ! 心の目で兄さんの顔はバッチリ見えてますし、他のものも見えなくても気配とかで大体のことはわかるようになりましたから!」


 その黒髪ボブの美少女の言っていることは正直よくわからなかったが、彼女を見ているとなぜがものすごく懐かしいような気持ちになってくるのだ。


「どうしたんですか? 兄さん? そんなにボクのことをまじまじと見ちゃって! もしかして愛の告白でもするつもりですか?」


 正直それが冗談なのか本気で言っているのかも俺にはよくわからなかった。


「・・・・・・なあ、なんであんたは俺のことを兄さんなんて呼ぶんだ? まさか俺たちが兄妹きょうだいなんてことはないよな?」


「何言ってるんですか? ボクと離れている間にそんなふうにして女のことを口説いていたんじゃないでしょうね?」


「いや、冗談じゃなくて本当にわからないんだ! 教えてくれ!」


「兄さん? 本当に、ボクのことがわからないんですか?」


「・・・・・・ああ、申し訳ないけど」


「そんなぁ! ・・・・・・でも、それって・・・・・・もしかして、あのちびっちゃいのに飛ばされた時、記憶を奪われちゃったんじゃないですか? ボクが視力を奪われたように!」


「記憶を?」


「ボクはさっきも言いましたけど、ユアール・プライツ第121番 伍長ごちょう! あなたの部下です。そして、兄さん、あなたはルーフェンス・マークス准尉じゅんい! 誇り高きツーツンツ王国の軍人です! そして、ボクたちはヘッケルト教授というを助けるために旅に出たんですよ! 本当に全て忘れてしまったんですか?」


 そのユアール・プライツという黒髪ボブの美少女にそう言われても俺はまだ何も思い出すことができなかった。


「あんたが言っていることが全くの嘘じゃないことは俺にだってわかる。でも、俺がそのツーツンツ王国ってところの軍人だったなんて・・・・・・うまく理解できないんだ!」


「大丈夫ですよ。ゆっくり思い出しましょうよ! ボクも視力を奪われて最初はすごく動揺したんです! でも、今ではこの通り立ち直りました! だから兄さんも自分の記憶から逃げないでちゃんと全部思い出してください! 他のメンバーも探してあげなきゃいけないし、ヘッケルト教授のことをもちろん救わなきゃいけないんですよ、ボクらは! だから自分の記憶から逃げないでください! 決して悪いばかりの記憶ではないですから!」


 ユアール・プライツという黒髪ボブの美少女が必死にそう言ってくるので、俺はちょっと圧倒されてしまう。


 でも、少しずつこの目の前の少女がただの他人ではないような気がしていた。

 


「師匠! 師匠!」


 とユニカが何度も心配そうに俺のことを呼んでいる。


 俺はその声を聞きながら、やっと何かを思い出せそうな、そんな予感を感じ始めていた。


 

※※※

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魔術軍の軍人に転生したら交際相手が皆悲惨なほど落ちぶれる絶世のヤンデレ爆乳美女にベタ惚れされオワタと思ったらグングン出世して他にも曰く付きの美女やら美少女ばかり寄ってくるんだが今のところ順風満帆です。 新田竜 @ragiz

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